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カンボジアにいるひとりの和僑

海外で活躍する日本人起業家のネットワーク「和僑会」が今年で設立 10周年を迎えた。先月、香港で年に一度の世界大会が行われ、和僑会の創設者・筒井修さんと二代目会長・荻野正明さんを中心に各地から集まった数百名の起業家が議論や交流を行った。

私も縁あって 10年前の設立時から和僑会に関わってきたが、会がここまで大きくなるとは想像していなかった。今では 20か国以上の国々で 2,000名を超える和僑会の会員が活動しているという。こんなに大きくなったのは筒井さんや荻野さんの起業家としての高い実績と後輩思いの人柄に負うところが大きい。それに時勢というものが加わった。

駐在員や出張での海外ビジネスではなく、家族も現地に呼んでそこに根を張るつもりで海外に出る。若い人なら現地の人と結婚するかもしれない。そうした日本人の若者たちを「和僑」と名づけ、インターネットとリアルを織りまぜて交流する。そんな場所と仕組みを作ったのが和僑会だったのだ。いまからみれば、会が発展しないわけがない。

日本国内にも和僑会がある。東京、名古屋、関西、沖縄、北海道、東北、京浜多摩、九州などに和僑会があり定期的に例会やイベントを開催している。日本に居ながら「和僑会」とはどうしたことか。それは、海外進出への準備や学習であったり海外の和僑の人たちの日本の窓口という意味あいもある。ボーダーレスの今、海外(特にアジア)は国内出張と変わらない時間や経費や意識のもとで往来できるようになったのだ。

かく言う私も和僑の皆さんのためにあちこちにお邪魔した。最初は香港、次いで深セン、広州、東莞(とんがん)、台湾、バンコク、上海、北京などを回った。特に香港と深センとバンコクは何度も伺った。まったく手弁当なのだが、なぜか和僑会には魅力がある。その理由は、会員の魅力だと思っている。

ここにもあそこにもタフな男性、タフな女性がいる。表面的には穏やかで温厚そうでありながら、実際にやっていることは身体を張り、人生を賭けて自分のアイデア・才能・可能性を現地にぶつけている。もしダメだったら日本に帰って来ようなどとは考えていない。ダメだったら終わりだし、絶対にダメになどならない。それどころか日本に居ては法律や組織の壁があって出来ないような大きな仕事をやろうとしている。事実、多くの和僑の人たちは、すでにそうしている。

中には「もう日本なんて終わりさ」「日本にいても先が暗い」と日本を見限っている人もいるが、圧倒的に多いのは「日本にがんばって欲しい。海外にいると自分が日本人だという気持ちがいつもある」といった憂国の士が多い。日本人であることを強く自覚していることも和僑の人たちに感じる魅力のひとつかもしれない。

もしあなたに、「和僑会にどんな凄い人がいるのか紹介してくれ」と言われれば私は何人でも何十人でも紹介できる。事実、いままで何人かの方をこの紙面でご紹介してきたと思う。その国やその都市で成功している日本人起業家を探せば、ほとんどの場合、それが和僑会の会員であることを発見されるに違いない。

最近、創始者の筒井さんの口から頻繁にある人の名前がでるようになった。それはカンボジアの黒川治郎さんだ。「まだ 35歳の若者だが、彼は根っからの和僑だ」と筒井さん。私が筒井さんに伺った話はこのようなものだった。

黒川さんがカンボジアに魅せられたのは、2010年 7月のこと。はじめてカンボジアに来て「ここの人たちと何かをやりたい」と感じたそうだ。

黒川さんは 1979年、イラクのバグダッド生まれ。10代の頃にはシンガポールで暮らした。東京理科大学在学中にプロサッカー選手を目指して渡英したが断念。サラリーマンを経て 27歳で起業。飲食店経営やコンサルタント業を手掛けた後、2010年にカンボジアで働くために会社を設立した。

最初は日本とカンボジアの往復だったが、翌 2011年、買ったばかりの新築の家を手放して家族とともにカンボジアに移住した。何をやるか決めていたわけではない。具体的なアイデアは何もなかった。ただ、カンボジアの人たちの笑顔が素敵だったから現地でなにか事業を始めたいと思った。

「大丈夫なんですか?人生の決断なのに、そんな決め方もあるのですか?」と私は筒井さんに聞いた。すると筒井さんは、「ボクもそうだった」と言った。筒井さんの場合は 30年前の香港なのだが、ここで暮らして何かをしたい、仕事は何でもいい。そこを自分の場所にしたいと思ったそうだ。和僑会にはそうやって国や街を決めた人は珍しくない。

「でも黒川さんは独身ではない。家族がいるのでしょう。どうやって見知らぬ国で家族を養っていくつもりなのか、心配にならなかったのですか?」と私。筒井さんはしばらく沈黙したあと、口をひらいた。

<明日につづく>
【武沢よりお知らせ】

カンボジアの日本人起業家・黒川治郎さんが年明け早々、日本に一時帰国されます。「名古屋和僑会」では黒川さんをお呼びして講演会を企画されました。

あなたが仮にカンボジアや海外ビジネスにご興味がなかったとしても、黒川さんの起業家魂に触れれば「よし、今年一年がんばるぞ!」という新鮮な気持ちになれることでしょう。

この講演会は反応が上々で、すでに残席は 10ほどになっているそうです。またとない機会ですのでお時間の作れる方は是非おすすめします。私はすでに予約しました。黒川さんと交流できる懇親会まで出るつもりです。筒井さんはこの日のためにビデオメッセージを下さるそうです。

「最後の楽園カンボジアで日本人街を創り上げた秘話」
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