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想いを実現するために

経営者の願いや想いというものは費用予算の割き方にあらわれる。
もし、あなたの想いがまだカタチになって表れていないとしたら、思いきった経費の予算化が必要なのではなかろうか。

副業ならいざ知らず、会社経営者なら “お金をかけないのが賢いやり方” なんていう風潮にならってはならない。

「社員は会社の財産。人材力こそが企業力だ」と思っておられる経営者なら、人材の採用や育成のための支出は「経費」ではなく「投資」と考え、しっかりと予算化なのだ。

先週お目にかかった二人の経営者をご紹介しよう。

A社長(35才)は自分で翻訳とITの会社を興して2年目。A社長と2名の技術者で創業し、順調に事業が発展してきたので、今年は初めて営業経験者(30才)を一名採用した。
その待遇が、「年収600万しか用意できなかった」(A社長談)というのだ。

30才で600万とは・・・、A社長の会社の内容からしてみれば思いきった投資だ。すごい。

採用された彼は、大手電機メーカーで営業管理の仕事をしていたという。初任給と賞与を幾らにすべきか、A社長は迷ったあげく、書店で買った賃金データの本やニュース報道などを参考に決めたのが年収600万円という条件。
毎月の給料は40万円、賞与は年二回、それぞれ60万円にしたという。

私は破格すぎるほどの好待遇だと思う。だってA社長の年収とさほど大差がないというではないか。下手をすれば一気に赤字転落だ。

「だって武沢さん、テレビでは冬の賞与88万円とか言ってましたよ、うちではとてもそこまでは」とAさん。

Aさんは、東京本社の大企業の給与水準を参考にしたのだが、地域の中小企業を参考相場にすべきだろう。
それは、相場にあわせるという意味ではなく、相場を参考にしてご自身の想いをそれに加味すればよいのだ。
マスコミで報道されるデータだけをそのまま鵜呑みにしてはならない。

もう一人、先週お目にかかったB社長も、経費の予算化という面では調査研究不足といえよう。
このB社長は3店舗のレストランを持つ。今後、人材育成に力を入れて出店スピードをあげていきたいという想いをもっていた。

だが、私の質問「社員一人あたりの研修教育費はおいくらですか?」に即答できない。それどころか、「研修教育費」という勘定科目が存在しないのでわからない、という。

そんな状態では「人材育成に力を入れる」という社長の想いが実現される可能性は薄い。

ドラッカーは『未来への決断』の中でこう述べている。

・・・
未来のための資源を創出し、維持していくには、毎年の支出の10%から12%を景気のいかんに関わらず、恒常的に予算化していかなければならない
・・・

わかりやすく解釈するならば、「粗利益の10%を研究開発に割け」となるだろう。
研究開発とは、文字通りの研究開発という意味だけでなく、商品開発や人材育成などもそれに含まれる。それぞれに経費科目を作り、研究開発全体として粗利益の1割を予算化すべきではないだろうか

想いを予算化するということに関して、二例ほどご紹介した。あなたの会社にあてはめてご検討いただきたい。