過日神戸で、「武沢さん、名刺交換しましょう」とKさんが歩み寄ってきた。私が自分の名刺を渡し終えると、彼女は名刺入れの中から赤・青・黄色の三枚のカードを取りだし、「お好きな色を選んでください」という。迷わず青を選んだ私。彼女は青だけを自分の手のひらに挟み、暖めたあと手を開くと、そのカードが彼女の名刺に変わっていた。裏にも表にも青い色はどこにも使われていない。
「えっ、どうなってるの?」と私。
これがコミュニケーション・マジックというものの一つらしい。
昨日は山形での経営者講座のあと、山形市内でコミュニケーション・マジックの交流会があった。
20名以上の男女が集ったこの交流会には、プロマジシャンのMr.HERO(ミスター・ヒーロー)氏とそのお弟子さんがマジックを披露する。
マジック好きの参加者は、ディナーとワインを楽しみながらマジックに魅入る。大盛りあがりで、あっという間の3時間だった。
Mr.HEROこと広庭孝次さんの本業は広告や販促のプロデュース会社の代表取締役。
マジックを見せてお金をもらうのが目的ではなく、マジックを通して互いのコミュニケーションを深めてもらうことが目的だという。
彼のワザを覚えようという何百人ものお弟子さんたちが全国にいて、その多くが経営者だというのだからおもしろい。
Mr.HERO → http://www.ivjapan.com/
マジックを通してコミュニケーションを活性化したいという方は、入会金と年会費を払ってマジックの指導をしてもらえる。もちろん、プロ仕様のマジックグッズを通信販売で買えるようにもなるのだ。
さて、話題は変わって昨日の続き。
今日は経営講座に参加されている経営者とのやりとりを二題ほどご紹介しよう。
まず一人目はA常務。彼の父親が社長の製造業。
「武沢さん、3ヶ年の数字計画を作れと言われてもこれから先の3ヶ年は不確定要素が大きくて作れません」とAさん。
経営者なのに “計画を作れない” とはただならぬ話。事情を聞いてみると、来年か再来年あたりに工場の移転拡張をする計画があり、そのタイミングや投資規模によって計画が大きく変わる。だから現時点で3ヶ年計画は作れない、というのだ。
●むしろ逆ではなかろうか。
先が読めないから読むための作業が必要になるのだ。少しでも未来の
不確定要素を減らしていく作業が経営者の仕事である。
Aさんがもしサラリーマンというのなら分からぬでもない。上司の意向次第によって自分の計画が大幅な軌道修正を余儀なくされることがあるからだ。
だがAさんは経営者だ。あらゆることを想定してシミュレートし、ベストな決定を行うための準備と計画が必要なのだ。
二人目は、製造業のB社長。
「武沢さん、あなたが先ほど話された内容は物理的に不可能ではないか」と言う。
私の話したことは、「月次試算を毎月一日に出し、それを元に経営会議をしている会社がある」という事例を紹介したのだ。
議をしている会社がある」という事例を紹介したのだ。
だがB社長いわく、仕入れも販売も毎月末日の夜中まで行われる。にもかかわらず、末日までに請求書を揃えることなど不可能で、うちのような会社では毎月一日に試算表を出すなど不可能だ、というのだ。
だったら二日でも良いではないか。三日だって悪くない。
B社長の会社では毎月中旬に前月の試算表が完成するという。それが一日でも早くなればそれだけでも進歩なのだが、B社長は「毎月一日」という部分に囚われてしまった。
私のメッセージは、「一日に決算しよう」というものではない。月次試算表を元に経営判断できる経営者になろう、というものであり、そのためには社内で試算表を作り、経営会議に速やかにレポートする必要があるのではないか、という提案だ。
「細部にとらわれた結果、何もやらない」というよりは、少しでも前へ進むことを考えるのが起業家的な学習スタンスだと思う。
何が出来ないか、ではなく、何ができるか、にスポットを当てよう。