仙台に本社を構える東山マシニング株式会社(仮称)の東山社長は、役員会議のあり方に疑問を感じていた。
役員会議が生産的とは思えない。”時間のロス”だと思える時だってある。
「経営の意思決定の場がこれで良いのだろうか?」
もともとがワンマン社長であり、いつも陣頭指揮をとってきたので、会議でもその延長で話題を独占してしまうのだ。
自分でもそれを自覚しているので、営業会議や開発会議などはあえて出席せず、担当部長に会の運営を任せているのだが、本当はそれすらも歯がゆい思いでみている。
「任せた以上はガマンが大切」と自分に言い聞かせてはいるが、事情が許せば全会議に出席して陣頭指揮したいというのが東山の本音である。
そんなある日、東山は盛岡にいる友人の西田の会社を訪ねた。西田の会社のミーティングルームは四面すべてがホワイトボードになっている。開発中の製品アイデアもあれば、今の賃金制度の問題点を書き出したメモまで、なんでもある。
西田とはアメリカ留学当時からの親友で、業種は違えど互いに一目置きあう盟友なのだ。
「うちでは、経営会議が会議になっていない。こんな会議ならいっそのこと止めてしまおうかとも考えてる」と陳情を始めた東山に向かって西田は、
「ちょっと前のオレと同じようなことを考えてるな。どうせワンマンの君のこと、会議を招集しておいて、それに間に合わせるために何かの準備をする、そうすることで会社経営を進めようという作戦なんだろう。それでうまく進んでいるうちは、ワンマン会議だって捨てたものではない」と西田。
東山は黙ってうなずきながら話の続きを待つ。
「だがな、経営会議は君の締め切り作りのためにだけあるのではない。そもそも会議の目的を考えてみたことがあるかい。君は会議にどのような効果を期待しているのだい?」
東山はしばし考えた後、
「そうだな、活発な議論が行われて、互いのアイデアがスパークして思いもかけない決定が下され、それが会社の推進力になっていく。そんな火花が散るような経営会議をやってみたいものだ」
「それは会議のHOW(どのような)の部分だ。しかもアイデア会議のことじゃないのか、それは。オレが聞きたいのは経営会議のWHY(目的、なぜ)のことだ。なぜ会議をやるのか?ということだ」
●東山は、ホワイトボードに自分の考えを整理しながら、次のようにまとめてみた。
1.役員教育
自分の考えや会社が大切にしている価値観を共有するための場。時には専門分野の知識や過去の経験などを若手経営陣に聞かせることで彼らの教育になる。
2.情報共有
お互いがもっている顧客情報や現場情報、社員情報などを交換して判断材料にする
3.報告・連絡・相談の場
日常のメールでは伝え切れなかった事柄について口頭で補足する
4.アイデア交換
一つのテーマについて、ブレーンストーミングでアイデアを出し合い、一人で考えた時よりもチーム全体で考えることのメリットを味わう
5.意思決定の場
問題解決や目標達成のための方法論について議論を尽くし、意思決定する
6.過去、決定したことのレビューの場
前回までに決定した事項がどのように進められ、どのような成果が上げられたか、それを今後も継続すべきか否かを確認する
これを聞いた西田は、
「さすがロジカルシンキングしてるね、大したものだ。で、君が、整理してくれた項目の中で、今の経営会議のどの部分がOKでどの部分がNGなのだい?」
と質問した。
「そうだなあ、「5」「6」が問題だ。他はおおむねOKとしておこう。やっぱり何といっても経営意思決定の場なのだから、意思決定の場でありたい。現状では、何となく決まってしまうので、バシッと意思決定が下されるという感じではない。ましては、翌週以降、それがどのように実行されたか否か、報告がないのが問題だ」
西田は、「なるほどね。ようやく君が抱えている問題がハッキリとわかってきたぞ。じゃあ、そろそろ提案してもいいかい」
「うん頼む」
「とてもシンプルな方法によって、君の不満の9割は解決するはずだ。それは会議のシステムとツールで簡単に解決するはずだ」
「そんな方法があるの?」
「ある。うちで実証済みだ。君の会社でも使えるはずだ」
<明日に続く>