2年前、わずか数人でスタートした香港非凡会(現地名称:「和僑会」わきょうかい)がいま熱狂的状況になっている。
和僑会 http://www.wa-kyo.com/
和僑会とは、香港や中国華南地区(広州、深セン、東莞、珠海など)で活躍する日本人経営者200名近くが登録し、毎月の例会を継続開催している交流会組織のこと。
この夏には、日本野球界を代表する元監督までもが飛び入りゲストとして駆けつけスピーチしてくれるような会になった。
この和僑会の活動が中国本土(上海)にも飛び火し「上海和僑会」もスタートした。さらに今後は、タイ、インド、ブラジル、ロシアにまで「和僑会ネット」を広げていくというのだからアツイ。
無数に異業種交流会があるなか、なぜ「和僑会」がこれほどまでに活発なのか。
その要因のひとつに、集まっているメンバーの濃さが考えられる。
大半がパワフルな起業家である。自分のリスクで外国にやって来て、言葉と文化の違いに苦戦しながらもがんばっている若手経営者が多いのだ。
それだけではない。
和僑会メンバーは志をもっていなければならず、海外で働く日本人に恥じない礼節とマナーをわきまえていなければならない。
「時間を守れないような人間が、仕事上の大きな約束が守れますか」
「ノータイ、ノーカラーのシャツで人から何かを教えてもらう服装と言えますか」
など、耳が痛くなるような話を諄々と説いてくれるのが、和僑会の顧問・筒井修さんだ。
氏は貿易業と日本語学校のオーナーを務める太陽商事の社長。会の世話人として、リサイクルビジネスなどで成功されている藤(とう)さんがきめ細かく諸連絡や手配関係を全うされている。
和僑会の中核メンバーも多士済済。
香港で独立して3年目、30才代半ばにして早くも従業員2000人の会社のオーナーになった堀さん(部品製造)や、水浄化システムに関連する3つの会社経営を行う女性経営者の熨斗(のし)さん、人材ビジネスで活躍中の松本さんや鈴木さんなどなど、若くて実力ある面々が中核メンバーとして揃っているのもこの会の魅力になっている。
そんな熱いメンバーが揃った非凡会のあと、今回は一部の方とご一緒に東莞とマカオを訪問した。
3年前から東莞(とんがん)で製造業と経営コンサルティング業を営む谷口さんと中尾さんに東莞事情に関するレクチャーをしていただいた。
上海の地価が昨年ついに下落したが、東莞(とんがん)は、中国国内でももっともめざましい地価上昇率を誇る。それでいて、今なお深センや広州、珠海など近隣地区とくらべてもかなり地価は安いのだ。
だが「世界の工場」と呼ばれるこの華南地区でも頭が痛い問題がある。その一つが求人問題だ。
かつては内陸地帯から無尽蔵に労働者が供給されるのが強みだったが、今ではその内陸地帯にまで大工場ができはじめたせいで、思ったほど人が集まらないという現象が起きている。その結果、最低賃金も短期間に数パーセント上昇し、コスト的に見合わない業種も出ているという。たとえば、手作業をともなう労働集約型の製造業などでは、より一層安い賃金をもとめて他地域へ移動せざるを得なくなっているのだ。
また、環境方面の法規制強化によって水や大気の汚染につながるような業種はそもそも参入が認められなくなった。
「世界の工場」だった華南地区が、今では「世界の先端工場」をめざして変貌しようとしているわけだ。
ところで今、私はこの原稿をマカオのホテルで書いている。中国の娯楽・エンタテイメントの分野を担当しているのが南の楽園・マカオである。
昨年、ラスベガスに出来たばかりのウィンホテルが早くもこのマカオにも先日オープンした。来年には、ホテル・ベネチアンもオープン予定で、街の風景も急ピッチでラスベガス化しつつある。
アメリカ資本と中国政府が共同で開発を進めるマカオプロジェクト。
近い将来には、世界最大のエンターテイメントアイランドになるのは間違いなかろう。
4年前、マカオ政府は地元の財閥・スタンレー・ホー氏が40年間独占していたマカオのカジノ経営権を、ラスベガスの大手資本の一部に開放した。約40年続いた独占体制に終止符を打ったのだ。
かつては博打と売春というダーティなイメージだったマカオが、カップルや家族で楽しめるお洒落なショーと買い物と食事の楽園都市になりつつあるのだ。しかもまだ、マカオの成長は序章にすぎない。
爆発的な成長と、日本人が堰を切ったように流れ込むのはこれからだといわれている。
ネット百科事典の「ウィキペディア」によれば、2005年度の日本国全体の外国人観光客は約500万人であったのに対し、マカオに既に1871万人の観光客がやってきている。
そのうち、中国本土からの入境は1046万人(56%)であった。
マカオ国際空港から飛行機で2時間の商業圏内に11億人の人口を有しているが、ラスベガスは同じ2時間圏に2億5千人であり、潜在マーケットに格段の差が認められる。さらにマカオは、5時間以内の商業圏に地球上の人口の63%が住む好立地である。そこに世界最大のカジノ・リゾートが建立された暁には、世界一の観光地となる姿が想像にたやすい。
先陣を切った、ラスベガス大手カジノの「マカオサンズ」(総工費約250億円、土地面積約4400坪ラスベガスの豪華カジノと同じ内装を採用)は、2004年5月のマカオでの開業初年度で440億円の収益を上げた。
わずか一年で投資を回収し、来年の「ベネチアン」開業にはずみをつけている。
この成長を傍観していてよいのだろうか?
という気になる東莞とマカオである。
船の時間が迫ったので、今日はここまで。