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一日一枚書く

中日ドラゴンズがセリーグを征した。最小限の選手補強しか行わず、練習と方針の徹底で勝ち抜いてきた「俺流」落合采配はお見事だ。
彼が就任してからのドラゴンズは、優勝、二位、優勝と文句なし。

一方の阪神・岡田監督にしても四位、優勝、二位だから、こちらも手腕を評価して良かろう。

これからの注目は、今日から始まるパリーグの第二ステージ優勝争い、そして日本シリーズへ。
さらには11月上旬に五試合行われるイオン日米野球2006と、KONAMI-CUP アジアシリーズ2006、ドラフト会議(11月21日)やストーブリーグ、とプロ野球をとりまく話題は師走まで尽きることがない。

だが、多くのプロ野球選手や監督・コーチにとってみれば、すでに来年が始まっている。今年は終わったのだ。
今年の成果や反省をふまえ、しかるべき補強・練習を開始している。

ビジネスや経営だって同じだ。
今年はまだ三ヶ月弱残っているが、同時に来年はすでに始まっているともいえる。

2007年版の手帳やカレンダーを入手し、心機一転して来年に期する人も多いだろうが、来年は来年にやってくるのではない。
すでに始まっている。今日の過ごし方が来年を決める。

明日につながる今日の過ごし方とは何だろうか。

今年の成果反省を踏まえて、変えなければならないものもあれば、変えてはならないものもある。そのあたりの見極めがポイントなのだ。

変えてはならないもののひとつは、決めた練習をサボらずに必ずやることだ。
私なら、執筆や読書。それに運動だ。
決め事を貫く、それを「行」(ぎょう)と呼んでもかまわない。

山岡鉄舟は、書、剣、禅で道を極めた人だが、中でも書の早さと多さには驚くばかりである。
晩年は胃ガンを患って医師の勧めで7月に絶筆したのだが、最後の5ヶ月に書いた扇子が4万本(一日あたり270本ペース)。
その前年には大蔵経(だいぞうきょう)全126巻の筆写を発願し、毎晩午前二時まで写経に励み、完成させている。

「大変なことですなぁ」と周囲が声をかけると、鉄舟はいつもこう答えたそうだ。

「なあに、ただ毎日一枚書くだけだと思っておりますから、なんの造作もありません」

一日一枚は大したことではない。誰だって心すればできる。
一週間七枚だって無理ではない。だが、一年で365枚は大変だ。
十年で三千六百五十枚は至難のワザだ。三十年で一万枚となると、もう「神業」としかいいようがない。

一定以上の才能をもち、ひたむきに「行」を継続できる人が到達できる世界がある。

落合監督はその世界を知悉している人なのではなかろうか。来年、ドラゴンズに勝てるのは、彼ら以上に「行」を継続した選手がたくさんいるチームしかない。