「甲子園に出るのが夢」というA高校と、「甲子園で全国制覇する」というB高校が甲子園で対戦したとすると、勝つ可能性が高いのはB高校のほうだろう。
すでに目標を達成してしまったA高校と、今なお目標実現の途上にいるB高校とではモティベーションに差があって当然だろう。だから夢は大きくなければならない。
だが、誤解してはならない。
子供の大ボラ大会のような夢やビジョンを語ることが大きな夢の持ち主であるかのような風潮があるが、大ボラそのものには大した価値がない。
曰く
・月へ行って最初の会社を作る
・時価総額世界一になる
・メジャー球団を買収する
などなど、言うのは自由だが、問題はその後なのだ。具体的にどうするかが勝負を決める。
「ビジョナリーカンパニー2」(日経BP社刊)では、偉大な企業に至るプロセスには”準備段階”と”突破段階”があるとして、次のような実例を紹介している。
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1960年代から70年代にかけてバスケットボールで圧倒的な力を誇ったUCLAブルーインズというチームがある。このチームの伝説の名コーチ、ジョン・ウッデンのもと全米大学選手権で12年間に10回優勝し、あるときには61連勝をも記録している。
しかし、ウッデンがブルーンズのコーチになって、全米大学選手権で初優勝するまでに何年かかったかご存じだろうか。
答えは15年である。
1948年から63年まで、ウッデンは地味な努力を続け、64年の初優勝にこぎつけた。この15年間、チームの基礎を築き、優秀な高校生を発掘する組織を作り、一貫した考え方を実行し、フルコートプレスのスタイルに磨きをかけていった。当初は物静かで穏やかに話すコーチにもブルーインズにも誰もそれほど注目していなかったが、あるとき突破段階に達し、10年以上にわたって全米の強豪をつぎつぎに打ち破るようになった。
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地味で着実な努力を長期間にわたって続ける覚悟があるや否やが勝負の分かれ道だと思う。
たった一年の結果を問われて監督を更迭するような野球チームには明日はない。長期事業計画を作り、その中における今年の位置づけをよく理解し、目先の結果に右顧左眄(うこさべん)しない経営が大切なのだ。
冒頭の「今日の言葉」で紹介した「勝つ意欲より準備する意欲だ」というのも同じ意味だと思う。長期にわたって勝つための準備をし続けるチームだけが長期にわたって勝てるはずだ。
そのためにはモティベーションの泉を結果に置くのではなく、プロセスに置こう。
勝ちたい → 練習したい
成功したい → 勉強したい、早起きしたい
お金がほしい → 今日も良い仕事をしたい
結果ではなくプロセスに欲望をもつことでうまくいく。