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インプロゲーム

絶頂期の最中、てんぷくトリオ時代からの盟友だった三波伸介が急死し、ショックを受け葬儀で号泣した伊東四朗氏。
これから先、一人でどうやって行こうかと不安になったに違いない。

そんな伊東氏も、翌年(1983年)からスタートしたNHK連続テレビ小説『おしん』の父親役に抜擢され、シリアスな演技もできる俳優としても地歩を固めた。

もう三波伸介という偉大な傘に守られたコメディアンではない。
押しも押されもせぬ、立派なエンタテイナーである。
そんな伊東氏の名演技の裏側には、自らの感情を表現するための秘法があるという。

某日。
子供と永久の別れをする場面の収録日。父親役の伊東氏は、今日が初対面の子役と打ち合わせ。楽屋に入って少年との世間話もそこそこに、伊東氏がとった行動がインプロゲーム的だ。インプロゲームについては後述する。

伊東氏は、子役の少年をハグした。何分間もだまってハグし続けた。
肩や二の腕の感触を確かめ、髪の毛のにおいを嗅ぎ、頭のてっぺんに自分の頬をすりすりした。まるでわが子を抱きしめるように。

こうして子供と充分なスキンシップを行うことで、別れのシーンに特別な思いがこみ上げてくるという。愛している、別れたくないという気持ちになるためには、愛している、別れたくないという気持ちを伝えるための行動が必要なのだ。

余談ながら、最近学校でフォークダンスがなくなってきているそうだ。
それにかわるのがよさこいソーランだそうだが、そちらにはスキンシップがない。スキンシップが苦手な青少年が増えてこなければよいが。

さて、昨日までの二日間、広島の宮島で合宿非凡会を行った。その参加メンバーのお一人に、インプロゲームを主催する立場の方がみえた。

インプロゲームとは、Improvisation(即興)から生まれたゲーム。感情開放のトレーニングとして演劇の分野で盛んに行われているものだ。
この手法は最近では、演劇以外の分野(ビジネスや教育現場)でも取り入れられるようになり、受講者からは、『私って、こんなに表現力が豊かなんだ!と初めて知り、とても嬉しかった』というようなコメントが寄せられるという。

自分の感情や行動に型をはめているのは、他ならぬ自分自身である。
素直な感情表現を出すためには一定のトレーニングが必要なのだ。

広島での非凡会では、隣り合った人と目を閉じて手の平から肩にかけて90秒間自由にスキンシップする練習をした。

最初の練習相手のときには、お互いに緊張して動けない。
二人目、三人目と練習が進むたびに恥じらいや緊張が解けて、相手と自由にスキンシップができるようになる。
すると、外見や会話だけでは伝わってこなかった相手の情報がキャッチできるようになる。短時間で親しくなれるのだ。

もちろんスキンシップだけがインプロゲームではないが、優れた役者になるためのトレーニングプログラムが企業や教育現場に応用されていくことは素晴らしいことだと思う。

「インプロゲーム」、覚えておこう。