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3,000円ではなく8,400円

過日、ある業界団体に招かれて講演に出向いた。数十人の経営者が集まっている中、「がんばれ社長!」読者が一人いてくれた。
知らない人ばかりのときには、まず自己紹介から入って徐々に本題に移っていく。
だが、この日、私のテンションは全然上がらない。
なぜなら最前列右端で寝ている人がいた。寝息までこちらに聞こえてくる。
30分後、「夢のリスト作り」の5分間作成コンテストにも彼一人だけ参加せず、時々うつろな目を開けるものの、また腕組みして寝だす。

そこで私が犯した最大の誤りは、彼を放置したことだ。

彼は本当は私の話を聞きたかったのだが、前夜に徹夜して疲れていたのかもしれない。あるいは、主催者の団体から強引に誘われて、本当は興味がない講演会にむりやり連れ出されたのかもしれない。はたまた、彼はこの団体も気兼ねするような地元の大物社長で普段からこのような態度をとっている人なのかもしれない。

だが理由の如何にかかわらず、最初から最後まで聞く姿勢のない聴衆を追いだすことは講師の権限だと思う。いや、義務かもしれない。
私はこの講演会では自分の権限と義務を行使しなかったことが今思い出しても悔やまれる。

そんな中、熱気に包まれた状態で迎えられてゆく講師の仕事はやり甲斐があるもので、一気にこちらのテンションまで上がってくる。

先週金曜日、ドリームインテリジェンス株式会社(東京、久保ひろし社長、以下「ドリーム社」)主催の講演会で講演を行った。

同社が主催するセミナーやイベントはいつも満席で、ビジネスとしてもきちんと成立させるというのが強みの会社だ。
そこで、独断ではあるがドリーム社の集客力の秘訣をさぐってみた。

ドリームインテリジェンスさんでの講演
http://www.rakuichi-rakuza.com/bstyle/b15kai.html

まず講演のプライシング(価格設定)
「値決めが経営であり、社長の器があらわれる」(稲盛和夫氏)ということばがある。

私の90分講演が8,400円だから、ドリーム社のイベント価格は概して安い方ではない。

「3,000円で100名集めるよりは、8,400円で30名集めたほうがお客の満足度が高い」と久保社長は知っているからに違いない。
同社のイベントに集まるお客の多くはリピーターだが、皆、価格にも納得しているようだ。なぜなら、同社のイベントに参加すれば、いつも値段以上のものを返してくれるという信用とブランドを築いてきたからだ。

「3,000円ではなく8,400円」という気持ちは随所に表れる。

・セミナー会場の質へのこだわり
新宿住友ビル47階のセミナールーム。窓外に見おろす都心のながめは絶景で、六本木ヒルズのそれを思い出す

・講師へのこだわり
過去同社が招いた講師陣は、いずれもその分野の第一人者。
ドリーム社の久保社長やスタッフが、「この人に会いたい、お話しを聞きたい」と思った人を招くわけだから、おのずと集客にも力がはいる

・セミナーの人数へのこだわり
入れるだけ入れてしまおうという主催者が多い中、あえて30名用の会議室にきっちりと30名まで集め、それ以上にまで部屋を大きくしようとしない。だから、話し手と聞き手にいつも一体感が生まれる。
逆に言うと30名までは何が何でも集めきる

・サプライズの仕掛け
ちょっとしたオマケが毎回ある。事前に予告してないオマケが発表された瞬間、参加者の目が輝く。スタッフもサプライズを提供するのを楽しんでいるようだ。

今回の集客ではビデオを使った。

WEBサイトで久保社長のメッセージビデオを流し、参加を呼びかけた。
それだけだったらよく聞く話だが、今回はもっと手間ひまかけた。

過去、同社のイベントに参加して親しくなり、今回のイベントにも是非来てほしいと思う一人一人に対してビデオメッセージを撮ったというのだ。もちろん一人一人(一本一本)異なるメッセージだ。

「あ、山田社長こんにちは、ドリームインテリジェンスの久保です。ちょっとご無沙汰してしまって申し訳ありません。日頃、うちの野澤がお世話になっています。実は、今回、かねがねお招きしたかったメルマガ作者の・・・・」という具合に一本ずつ収録していったそうだ。

そうしたメッセージを受け取った人の半数が参加してくれたという。
欠席の知らせを受けた人でも、詫びと同時に次回以降は極力参加するというようなメッセージも送ってくれたという。

集客は単なる告知やお願いなのではなく、フェイスtoフェイスでのメッセージングであり、企業におけるマーケティング活動そのものなのだ。
また、講演会の運営や二次会の運営にあたっても、始まる前や後できちんと企業メッセージを参加者に伝える久保社長の姿勢に好感をもった次第である。

広告宣伝費をかけて会社の認知度をあげるよりも、一つのイベントをきっちりと開催し、満足度の高い運営を行うほうがブランディング効果は高いのだ。

ドリームインテリジェンス
http://www.rakuichi-rakuza.com/info/index.html