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寄せられた社内派閥一掃策 その1

昨日、お題を差し上げた。

「久和原アルミ株式会社」(仮名)にできた社内派閥を一掃するにはどうすべきか。回答者 28名の方から 29作の案が集まりました。丹念に読ませていただき、そのうちの 14作品を本メルマガでご紹介いたします。(あえて全員、匿名紹介とさせていただきます)

紹介作品の発案者には武沢サイン入り【マンダラ Wish-List】をプレゼントさせていただきます。選考理由はただひとつ、ご自身の意見がきちんと表現できていること。建設的でなかったり、感情に走り過ぎて乱暴だったり、論拠があいまいなご意見は落選とさせていただきました。

今日は当選作 7つと落選作を 1つをご紹介し、明日も引きつづき当選作7つと落選作1つをご紹介する予定です。

ではさっそく当選作のご紹介から。

1.N さん(会社勤務、男性、原文のまま)

技術もあり、業績も良く、社歴も若い活力のある会社。経営計画書があるので、数字の目標はしっかりとあるので、足らないものは何かと考えると、会社として1つ共通の価値観がない、見えないのではと感じた。たとえば朝30分間の読書会とか、社員による社内清掃とか、毎日同じことをする時間をつくること、それも共通の価値観の醸成になるものを実施し、それに基づいての成果発表会という流れを作っていくことで、いまある 3つの価値観 を一つにする。目的は会社の、社長の価値観に合致すること。読書会は実にベタだが「7つ習慣」「人を動かす」あるいは「京セラフィロソフィ」といったところか。この企業の持つ文化に馴染みやすいものがいいと考える。読書会、社内清掃どちらを実施するにしても、その時間を勤務時間に組み込み全員参加という仕組みが重要。共通の価値観から企業文化を作り上げ、会社の目標、社長の方針のもと仕事を進める。

<武沢より>
長年の会社勤め経験のなかで、まだ一度も派閥抗争に直面したことがないという N さんですが、実に正統派というべき骨太なご意見を頂戴しました。ありがとうございます。

2.Y さん(会社勤務、男性、原文のまま)

愚案ながら、A 部長派と B 部長派、 C 主任派、3派が一丸となって、達成を目指す目標を掲げる。例えば、売上拡大や製造コスト削減、はたまた、社員の福利厚生としての、余暇、社員旅行や運動会など。それによって、一体感を産み出し、ひとつの方向へ進んでいると個々の社員レベルで感じ取れ、やがて、派閥を超えた付き合いが自然と発生する。長年のこじれた関係を解消するのは、容易ではないが、ショック療法ともいえる劇的な出来事がきっかけで、仲間意識を共有することが出来るのではないかと考える。以上。

<武沢より>
他の方からも同様の意見がありましたが、一体感を醸成するような取り組みが必要であるという点で私も同感です。

3.T さん(男性、原文のまま)

派閥を一掃するという発想はやめた方がいいと思います。人間好き嫌いも有るし、やめさせようとして無くなるものでは無い、群れを作るのは本能のようなものだと思います。(自分は群れるのは嫌いですが)何かこれはという手法があって解決する事が有ったとしても、すぐに違う問題として出てくるんではないでしょうか。解決方法は一つ。社長が本気になって社員と向き合う事です。マネジメントするというように人をコントロールする事を社長の仕事などと考えずに、人の心に火を付ける事を仕事だと思って、久和原派閥をつくるくらいの気持ちで、まずは派閥の長三人と、一人ずつサシで飲む機会でも作って、熱く仕事の意義を語り、それほど多い人数の会社では無いので、主だったほとんどの社員とサシで飲む機会をつくり、仕事の意義を熱く語る。そこに向き合えないならこの問題はもっと膨らんでいくと思います。社員に問題が有るんでは無くて、社長の心構えの問題ですから、問題点を間違えないようにしないといけないと思います。

<武沢より>
派閥を肯定しているご意見です。派閥長を呑みこんでいくぐらいの気位が要る、という考え方は賛同できます。

S さん、(会社経営、男性、原文のまま)

「軍師、官兵衛」における、黒田官兵衛、石田三成、茶々の相克そのものであるが、久和原社長は秀吉の失敗の轍を踏まないこと。先ずは、新派閥のC主任派を狙って早期解消すること。解消に成功すればA,B両部長派閥の解消に集中できる。その為C主任を、ねね役の社長夫人の配下におき、男性の力が如何に役立つかを、諄々とC主任に説いていく。又、女性社員こそ我社の守護神であることも強調する。幸い幹部社員はいずれも会社に対する忠誠心旺盛とのこと。C主任も派閥争いの無益さに目が覚め、C派閥は解消というより一段と次元の高い意識の集団となり男性達にも一目置かれる存在となる。次に、経営計画書で3年先の売上倍増を計画する。受注先を社長の以前の勤務先以外にも開拓せざるを得ないから、その責任者にA部長を任命し、B部長には倍増する生産を消化し得る生産体制の構築責任を命ずる。現在の3派閥が、営業、生産、社内体制の3本柱に吸収され社業の発展となる。

<武沢より>
軍師・官兵衛を研究されているだけあって策士らしいご意見、スジが通っています。

5.N さん(男性、病院勤務、原文のまま)

問題から抽出した課題・趣旨・狙い・取組み・・・と分類して書いているうちに1,000字を超しましたので思い切って箇条書きでまとめなおしました。ご笑納いただければ幸いです。ただ、処方箋を書くのは楽ですが、実施するには相当腹に力を籠めないとできないかと思います。実例とのことですがうまく改善されることを祈っております。
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(1)経営計画書の浸透を再確認する。
・管理職の経営計画書(経営責任・結果)に対する緊張感の少なさは危険。
・経営計画の中間進捗報告会を行う。
(2)管理職にはき然とした姿勢で臨むべき。あわせて交流を促す。
・分派活動は経営計画書違反。
・部長は自派閥以外の職員との個別面談を実施し速やかに報告させること。
(3)職員向けの研修を会社主催とする。懇親会費も予算化する。
・あやしげな「勉強会」を駆逐するためにも業務時間内に製品や業界動向の「勉強会」を、その後の「懇親会」も全員参加
で定期的に行うこと。
(4)社長自身が職員一人ひとりにもっと近づくべき
・社長自身が部長以上に職員のことを知ろうという姿勢をもち一人ひとりとの社長面談等を強化すべき。
(5)業務上の問題をもっと深掘りしていくべき
・社内の業務プロセスに相当無理が生じている可能性がある。「男性のわがまま」という言葉を聞き流さず業務全体を見直  すべき。
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<武沢より>
N さん、あなたはコンサルタントとしても一流ですね。問題把握と整理が実に適切だと思います。

6.M さん(九州、男性、会社経営) ほぼ原文

当社は約 80名の社員のうち 95%が女性という環境なのですが、お題と同じような問題を抱えておりまして、思わずメールさせて頂きました。当社では調査管理という専門職の主力部門と、事務という補佐部門があり、それぞれに抱える業務が異なりますが、部門協力が恥ずかしながら出来ておりません。そこで今考えているのが、管理の長の主任を補佐する事務の長として、主任補佐、というものを設けて指揮命令権を一本化、かつ役職として補佐を約束させるのはどうかな、と思っています。遅まきながら、以下、回答です。

A部長、B部長、C主任という三派閥をまとめるために、役職としては一つ下がった主任である Cに、両派閥の補佐をする役割を設けて、女性の力を借りつつ、AB 部門の仲立ちを行う。それによって A,Bの部門間の協力体制を作り、かつ C派閥を両派閥に組み込む。具体的には C主任を一番先に社長の仲間(方針の理解者)に取り込んで、Cの力と勢力でもって A,Bの立場、力バランスを保持しつつ社業邁進の為に軸を揃える。もしくは専務である妻が実務 NO2でもあるならば、そちらを補佐する形で、ABについてもらう。いずれにしても女性の力を借りるということでは同様です。Cは恐らく経理もしくは営業事務にあたると思いますが、営業、製造とも関わりのある業務にあたると思うので。2派閥だけであれば、どちらかに不満が残りそうですが、3つある上、女性も力を持たれている職場であれば、そこの力を借りられるに越したことはないのではないかなと。

<武沢より>
まさしく今、この問題に直面しておられる社長らしい、女性の力を活かそうとする作戦ですね。特に専務である奥様に着目された点も特筆されます。

7.K さん(営業職、男性、原文のまま)

派閥をチームに変えてしまいう事を提案します。
(プロ野球チームの様に変更すること)

<メリット>
・派閥がチームになるので、派閥の長には責任が出てくる。
・チームごとの業績評価ができる。
<手順>
・「三水会」「四金会」「一木会」を、「チーム三水」「チーム四金」「チーム一木」と称して人員を再配置する。
・それぞれの派閥長を「監督」という肩書きに変える。
・それぞれの監督は目標を設定し、その達成率で全チームを毎年業績評価する。
・新入社員は、履歴書と面接を経てドラフト制度で配置する。
・一定の業績を上げた社員は FA権が取得できる。(年間目標利益達成率 100%超 × 5年以上など)
・10年以上の目標達成実績で監督になれるなどオプション制度もあり。
・複数名の新人監督立候補がある場合は、どういうチームを作りたいというプレゼンを行い、総選挙を行う。

<武沢より>
派閥を公式チームに格上げして競わせるという諸葛孔明ばりのご意見斬新です。いっぺんに社内の空気が変わるかもしれませんね。

ではここで、落選者のご意見をひとつご紹介します。

U さん(関東、経営者、男性、ほぼ原文のまま)

久和原なる男性は、社長という肩書きを捨てるべきではないか。仕事の大半が元の勤務先だというところから創業の苦労を知らないのではないかと推察する。社内に派閥ができているのに手をこまねいているなど、無策の極みといわれて然るべきであろう。おそらく武沢氏がこの会社のコンサルをされているのであろうが、貴殿がいかなる助言を与えたところで、それを実行する経営者側に見識や胆力がなければいかなる献策も絵に書いた餅に終わる可能性大なり。悪いことは言わぬ、こういう社長とおつき合いされぬが貴殿のため。

<武沢より>
同意しかねますが、ひとつの意見としては筋が通っています。建設的な提案ではないという理由で「落選」とさせていただきました。

【明日につづく】