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しゃべり過ぎの経営者

時々、「あの人ほんとによくしゃべるなぁ。まるでお笑い芸人みたい。楽しいには違いないが、経営者らしくなるために単純に言葉数を半減させればよいのに・・・」と思ってしまう経営者がいる。

本人は自分のことを「論客」と思っているのかもしれないが、中味を伴わないおしゃべり上手は経営者としてプラスのこととは思えない。
むしろ控え目で口が重いくらいの経営者のほうが良い。

横綱や囲碁将棋の名人など、本当に強い人はペラペラしゃべらない。
才能があるのだがどこかで伸び悩み、なかなか頂点を極めることができない人のほうに雄弁者が多い。いや、雄弁だから伸び悩むのかもしれないのだ。

物事を「極める力」と「よくしゃべる力」とはどうやら相反することのようだ。

では、経営者に必要な資質って何だろう?

・経営者は、雄弁に我社の未来を物語る能力がほしい。
・経営者は、小さなことにこだわらず、度量大きくグイグイ引っ張ってくれる剛胆さがほしい。

これらの資質はみな大切に思えるが、あえて大切な順に並べ替えるとしたらどうなるか。

中国明代に書かれた『呻吟語』(しんぎんご)にその答えがある。
この古典の冒頭にこうあるのだ。

「深沈厚重(しんちんこうじゅう)なるは、是れ第一等の資質。磊落豪雄(らいらくごうゆう)なるは、是れ第二等の資質。聡明才弁なるは第三等の資質」

つまり、深沈厚重が一番大切、次に磊落豪雄、最後に聡明才弁が必要という意味だ。

そのようなお話をある場所でしたところ、次のような意見が返ってきて当惑した。

「武沢さん、今日の話はよく分からなかった。経営者にそのような人間的資質が必要なのだろうかと疑問に思う。将棋に棋力が必要なように、経営者には経営力が必要。プロの棋士や相撲の横綱が人間力だけで到達できるのなら、技や体力など不要でしょう。経営者にもまず必要なことは、儲かる会社を作ることであって、立派な人格者になることではないと思う」

さて、あなたならどのように答えるだろうか。

<明日につづく>