会社経営には戦略的な仕事と戦術的な仕事がある。戦略的な仕事とは、経営者しか行わないような仕事だ。
たとえば、
・事業の参入・撤退
・新しい資金調達法の考案
・経営理念の実践
・新人事制度の立案
・出店
・設備投資
・雇用人数や雇用方法の決定
・リストラ
などなど。
もちろんこれらの戦略業務に社員のアイデアや意見を取り入れる努力は必要だが、最終意志決定を行うのは社長である。
そもそも、これらの案件を経営テーマとして取り上げるのも社長であって、社員から出されることはまずない。
一方、戦術的な仕事とは、これらの戦略を具体化させるような仕事のことをいう。
戦略:「売上の半分をネットからの受注にする」
戦術:「売れるホームページを作る。そのために、・・・・」
という具合だ。
さらに、私たちには戦略業務や戦術業務以外に、もうひとつ大きなかたまりの仕事を行っている。それは、日常業務というものだ。
日常業務は過去においては戦略的だったり戦術的だったりしたものだが、今もそうだとは限らない。
したがって、日常業務の上に新しく戦略業務や戦術業務を乗せるのではなく、日常業務の中に戦略・戦術の業務を入れなければならない。
会社の規模が大きくなると社長以外の経営陣も経営を分担するようになる。
たとえば、財務担当役員が資金調達や資金運用を担当し、事業開発担当役員が新規事業の企画立案をおこなうというように。
しかし多くの中小企業や個人企業では、社長一人で戦略的な仕事を担当することになる。それどころか、専務業も営業部長業も社長が一人で兼務しているところも少なくない。
したがって社長は、意識して社長業務を行わないと誰も戦略的な仕事をやっていないという状態になる。経営者不在の経営だ。
「毎日が忙しくてなかなか先々のことを考えているヒマはない」という社長がいたら、すでにその会社は黄色信号だと思おう。
日常的な管理業務には信号がある。「調子が良い・悪い」とか、「予定通りか否」かという信号だ。だが、戦略業務には信号がない。
黄色信号が灯ったときには、すでに手遅れであることが多いのが戦略業務の特長でもある。
ある意味、社長は外科医でもある。
メスをもって企業を執刀する名医財前五郎(白い巨塔)でなければならない。