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ある会社の社員総会

父の跡を継ぐために大会社を退職し、地元にもどったA社長。世界的規模の製造業で10年間勤務し、現場の品質管理、安全管理、労務管理や人事管理など、ありとあらゆる管理技法を手みやげに父の会社に凱旋した。いや、「凱旋」のはずだった。

ところが、まるで中国に初めてやってきた外国商人のように「言葉が通じない、常識が通じない」という思いをすることになる。
トップダウンもボトムアップも通用しない。人対人のハートの振動が同じ波長にならないと、頭と頭、言葉と言葉では人は動かせないことを思い知る。
彼にとっての格闘がはじまった。いや、「格闘」なんて表現でもきれい過ぎるかもしれない。彼が社長でなかったらとっくに胃潰瘍で入院しているか、会社を辞めていただろう。
壮絶なまでにもがき苦しんだ。

あれから10年たった昨日の日曜日。
彼の会社の第一回社員総会に招かれた。百名近い社員が制服で勢揃いする中、第一部が「経営方針発表会」、第二部が「安全大会」という構成で行われた。

昨年、創業40年記念式典を行ったのだがこのような社員総会を開催するのは初めてだ。社長が考えていることを文字や数字にして伝えるだけでなく、各現場からも目標があがってきた。ようやくここまでたどり着いたというべきか。

方針書の内容としては、まだまだ初級レベルだと私は思う。数字目標にしても行動計画にしても不満や不足はたくさんある。

だが、私の不満はあくまで相対的なものだ。他社が挑戦している目標や計画に比べれば不満、という意味であって彼の会社にとってみれば、それは革命的なことなのかもしれない。
その判定は彼が後に行うことだが、私は自分の率直な意見として不満を彼に申し上げた。

ある意味、彼の会社40年の歴史とはいえ、全員参加型経営は今日が初日だ。
門出を祝ってあげたいという気持ちと、本当の格闘はまた今日からが本番だとゲキを飛ばしたい。

「がんばれA社長!」