ある新興宗教では、入信にあたって試験がある。教徒たちにも定期的に検定試験のようなものを行っているという。
教祖のメッセージをどの程度学習し、理解しているかが問われるのだ。
信仰と勉強との相関関係に疑問を感じなくもないが、受験社会に慣れてきた人たちにとっては、こうした試験という努力目標があり、そのための教材を与えられたほうががんばれるようなのだ。
経営にも社長検定試験のようなものがあって、「社長業3級」とか「初段合格」とかあればよい。
いや、あれば良いというだけでなく、ある出版社とプロジェクトを組んで「社長検定試験」(略してシャチョケン)の問題作りに着手した。
一年後をメドに各地の非凡会などで試験運用してみるつもりだ。
社長の実力を何らかの方法で客観的に評価・測定することには意味があると思う。
そんなことを思っていたら、駅の書店で『社長力』なるタイトルの本をみつけた。副題に「話題の経営者たちの実力と品格」とあり、著者は経済ジャーナリストの有森 隆氏だ。
著名な経営者を勝手格付けしている。格付け結果だけでなく、格付けの理由などもエピソード付きで紹介されているので、読みものとしても興味深い。仕事を終え、新幹線で缶ビールを明けながら読むのに適している本だろう。
この本で評価されている社長は35人。
敬称略ながら、USENの宇野康秀、サイバーエージェントの藤田晋、GMOの熊谷正寿、楽天の三木谷浩史、ソフトバンクの孫正義、ワタミの渡邊美樹、グッドウィルの折口雅博、SBIホールディングスの北尾吉孝、森ビルの森稔、オリックスの宮内義彦、松下電器産業の中村邦夫、ソニーのハワード・ストリンガー、キヤノンの御手洗冨士夫などなど、興味深い顔ぶればかり。
社長力を「A」「B」「C」とランク分けし、それぞれに「+」「-」とマイナスがつく場合もあるので、結構細かく評価している。
ただし金融機関が企業格付けするほどの明確な根拠ではない。
この本の社長力の根拠となるものは、旧帝国陸軍の作戦要務令を参考にしたもの、つまりトップの任務「状況判断、決断、処置」の三つ。それに社長業ならではの、目標設定力と後継者育成力も加えた五つだ。
だれがどのような理由で高評価(低評価)されているかを見てみよう。同時にあなたが自分自身の社長力を自己採点し、どのようなコメントをされるかを想像し、作文してみるのも余興として悪くない。
『社長力―話題の経営者たちの実力と品格』(有森 隆著、草思社)
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