ソフトバンクの孫正義氏がカリフォルニア大学バークレー校在学中に音声装置付きの多国語翻訳機の試作機を開発し、シャープ専務の佐々木正氏に1億円で買い取ってもらった話は有名だ。
孫氏は、翌年の1981年に帰国し、その1億円を資金に「日本ソフトバンク」を設立し事業を開始。その13年後の1994年に同社の株式を店頭公開し以来11年、今日にいたる。
孫氏が19歳の時につくったという「人生50年計画」の概略はこうだ。
・二十代で名乗りを上げ、
・三十代で軍資金を最低で一千億円貯め、
・四十代でひと勝負し、
・五十代で事業を完成させ、
・六十代で事業を後継者に引き継ぐ
今は1957年生まれの47才なので、「ひと勝負の時期」である。
もし仮に・・・
歴史にif(もし)はないと言われるが、もし仮にシャープの佐々木専務が1億円出してくれなかったら、孫さんとソフトバンクはどうなっていただろう。
そんなことを考えていたら、肝心要のシャープについて調べたくなった。
「早川式繰出鉛筆」がシャープ誕生のヒット作だ。これは、今日のシャープペンシルと言われているもので、開発者でありシャープ創業者・早川徳次氏の名前から「早川式」と名付けられた。
穴をあけずに締められるバックルベルトを開発したりするアイデア製品製造会社を営んでいたが、シャープペンシルのヒットで経営を安定させ、今日の家電メーカーシャープの礎となっている。
もし仮に、早川式繰出鉛筆がなかったら、今日のシャープはなく、孫さんへの1億円もない。
経営とは、ビジネスとは、人間とは、このような奇妙な縁でつながっていく。その発端となったのは、それぞれの人間の「ひと勝負」があったからだと私は思うのだ。