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幸運とスキル、どっちが大事?

アメリカ人投資家、ウィルモット・H・キッドIII氏(81)はウォーレン・バフェット氏(92)と並び称される投資の達人。
メディア嫌いでも有名で、いままで5回しか取材を受けていないそうだ。
そんなキッド氏がCEOから会長に退いた昨年、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の取材に応じた。

以下、その記事から私が印象に残った箇所をピックアップする。
投資家向けのメッセージだが、最後のくだりはしびれる内容なので、投資家以外の方にも是非お読みいただきたい。

キッド氏が率いる投資会社「セントラル・セキュリティーズ」は過去20年間の投資パフォーマンスでバフェット氏の「バークシャー・ハザウェイ」を上回ってきた。
さらには過去半世紀にわたってS&P500指数との比較でも、キッド氏の指揮下にあったセントラルが圧倒的に上回ってきた。

そんな伝説の投資家・キッド氏の成功の秘訣(ひけつ)を要約すると「忍耐、集中、勇気」となる。

一般的なファンドマネジャーたちは、株を1年ほど保有すれば「長期」だと胸を張る。
だがキッド氏の前では、彼らがまるでデイトレーダーに思えてくる。
氏は大抵、多くのファンドマネジャーの人生よりも長く株を持ち続けている。
セントラルは、持ち高が2番目に大きい半導体企業「アナログ・デバイセズ」の株を34年間保有している。
また、1974~2018年の40年以上にわたり、石油ガス探鉱・生産会社「マーフィー・オイル」の株を保有し続けた。

30年、40年保有なんて当たり前というスタンスに驚かされる
セントラルのポートフォリオは1年で11%入れ替わる。
ざっくり計算するとひとつの銘柄は10年近く保有することになる。
一般的なファンドに比べて数倍長いわけだ。

1年程度で売却してしまうファンドが多い事をキッド氏はこう語る。
「それでは、自分が何を保有しているのかさえ理解できないはずだ
成長している企業を、成長の続くうちにできる限り多く保有することが大切だ」

キッド氏の投資戦略はこうした「長期保有」(イコール忍耐)がひとつの大きな特色だがもうひとつある。
それは「集中」だ。
決して何百もの銘柄を少しずつ保有することはしない。
「われわれは常に集中すべきだと感じてきた」と同氏は言う。
「少数の大きなポジションをとるべきだ。有効なものは大量に保有する必要がある」

集中投資しているから、投資先の企業情報をより深く知ることになる。
今のピンチを乗り越える力があるのか、それともないのか、第三者でも判断できるようになるという。
それによって投資のリスクを低減できるので集中のメリットは大きい。

最後にWSJの記者は見事な質問をした。
それによって氏から哲学的な回答を得ることに成功した。
それはこんな質問だ。

「投資家にとって、幸運とスキルはどっちが大事ですか?」

キッド氏は静かに、しばらく笑顔を浮かべたあと記者が一生忘れられないこんな言葉を口にした。

「スキルとは、幸運を手にしたことに気づくこと」

さらにこう続く。
「幸いにも優れた企業に投資できたとき、自分がいかに幸運だったかということに気づき、さらに購入額を増やすこと。それがスキルだと思う。それから、自分が持っているものを決して手放さず、おじけづかないようにすることだ」

解説は不要だろう。
味わっていただきたい。