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牧師の祈り

昨日から中国(杭州)に来ている。タクシーの窓外をぼんやり眺めていたら、なぜか昔きいた韓国牧師のこんな話を思いだした。

まだかけ出しのころ、とても貧しかった。食べるものは信者からの献金や献品で糊口をしのいでいたが、布教活動するための自転車がなかった。徒歩による活動だけでは限界がある。そこで牧師は神に祈ることにした。

「神さま、あなたの栄光を表すために私は自転車を必要としています。どうか、自転車を私にさずけて下さい。み心のなるがままに、アーメン!」

一ヶ月たち、二ヶ月たち、とうとう半年たってしまった。
牧師は抗議の意味もこめて、こう祈った。

「神さま、私は全時間をあなたに捧げています。それは私の喜びです。でも自転車がなくて毎日の活動はとても不自由を感じています。もし、み心にかなうならば一日でも早く自転車を私に授けてください。それとも、私の活動はみ心にかなわないのでしょうか?」

すると、そのとき初めて神から返答が来た。

「あなたの祈りは毎日聞いている。あなたの願いをかなえてあげたいとそのたびに思う。だが、いつもあなたは”自転車が欲しい”としか言わない。私はどんな自転車をそなたに授けてよいのか分からないのだ。もっと具体的に祈ってくれ」

「そうかぁ、しまった。私が浅はかだった」と反省し、若き牧師は、祈り直した。
「色は銀色で、サドルは黒。それに・・・」

自転車の色や形、大きさ、カゴの色とか荷台の形状、ハンドルのデザインなど、超リアルにして祈ったのだ。

翌日、教会清掃のボランティアの婦人が乗ってきた自転車をみて牧師はビックリする。祈ったとおりの自転車なのだ。思わず「アッ」と声が出てしまった。

するとなんと、このボランティア婦人は、こう切り出したのだ。

「あのぉ、先生。これは先月買ったばかりの自転車なのですが、主人が私の誕生祝いにスクーターを買ってくれましたの。もしこれでよろしかったら、先生が役立ててくれませんか?」

牧師は絶叫した。 「ハレルヤー!!」 と。
この牧師はこの日を境にして、祈りを具体的にするように心がける。
その効あってか、日本にもたびたび伝道にくるような、韓国を代表する牧師になっていく。

心に描いた夢は必ず実現すると言うが、漠然と描いたものは実現しない。いや、実現に向けてのエネルギーが生じない。人生はエネルギーが作り出す。そのエネルギーは気から生まれる。気はあなたの夢想から始まるのだ。

「一億円の利益がほしい」とか「売上高20%アップの達成」などという目標は、漠然と”自転車が欲しい”と祈っている牧師と変わらない。

その目標が実現すればどんな良いインパクトが我々にあるのか、ということを感情レベルで理解できたとき、今までとは異質のエネルギーが生まれ、磁力を発するようになる。

そんな牧師の説教を、なぜか中国の景色を見ながら思い出した。