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悪い配パイ?

野菜ビジネスで失敗したユニクロ。「カネがあり人材もいたから、うまくいかなかった」と柳井会長は雑誌のインタビューで語っている。さらに、こう続く。
「カネがない、ヒトがいない、モノがない、チャンスがないことは、事業を成功させる4大条件だと僕は思っています」と。

ないないづくしのどこが素晴らしいのか?
それは、知恵をふりしぼる以外に道がなくなるからだ。経営は知恵の勝負。どうやら知恵という資産が最高の価値をもつようだ。

それを証明するかのようなある地方商店の話。

ある程度通いなれたお客さんですら迷子になるような商店があった。
広いから迷うのではない。狭いのに迷うような造りなのだ。

ドーム型の店内は放射線状に通路が伸び、東西南北の感覚がなくなってしまうような店舗設計になっている。先代社長が懲りすぎたようだ。
売り場のセオリーでは、店内の通路は広く、売り場やトイレなどの案内表示はわかりやすくされている必要がある。だが、A氏の店はそれとは逆行するかのようなドンキホーテも真っ青のワンダーランド状態。

先代社長からこの店舗を引き継いだ後継者のA氏は、「セオリーに反した店ながら、この店が僕に与えられた配パイ(はいぱい、麻雀用語で最初の条件のこと)だ。
この配パイをもとに切り盛りして成功していこう」と腹をくくった。
金を頼りにして安易に改装する道を拒否し、知恵をふりしぼる道を選んだ。

「トイレはどこ?」、「レジは?」とたびたび聞かれることはハンデキャップだと最初は思っていたがA氏は発想を変えてみた。
お客さんの方から店員に話しかけてくれるということは、その内容に関わらずありがたいことだ。

「この通路の突き当たりを右に回って、四つめの通路手前にトイレがあります」と答えるのをやめて、店員がお客を目的地まで誘導することにした。

「あのぉ、トイレはどこですか?」と聞かれると、ニコッと笑って「どうぞ、こちらです」と案内するのだ。それだけではない。
案内しつつ店員は、「今日も暑かったですねぇ」とか「今日は何かお探しですか?」などと自然な感じで話しかける。
店員とこうした個人的会話をすることによって、店とお客との距離がぐっと縮まるという。

さらにすごいのは、雨の日が一番混み合うという驚愕の事実。

店舗が小さく、駐車場もそれほど広くないことを武器にする逆転の発想だ。女性店員が駐車場に入ってきたお客の車まで傘をもって歩み寄る。そして相合い傘で店内まで誘導する。お客が車に戻るときには再び相合い傘で見送る。
そのおかげでこのお店、雨の日が一番繁昌するようになった。これも、駐車場が広大な大型店ではできないサービスだ。

金がなくても知恵がある。
人材がいなくても知恵がある。
優れたウリモノがなくても知恵がある。
優れた立地でなくても知恵がある。
問題だらけの会社やお店でも知恵がある。

知恵を働かせるには、情熱が必要だ。勝つんだ、勝てるんだ、という気力さえあれば、知恵は無尽蔵に生まれてくる。

さあ、今の配パイを武器にするような知恵を出そう。