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苦役から逃げない

アイデアが足りないのではない。それは充分満ち足りている。問題は、その実行にある。今日はそんなテーマで原稿を作ろうと思っている。つい最近、東北のある女性経営者の方から次のようなご質問メールをいただいているので、まずはご紹介しよう。

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武沢さんに、仕事のすすめ方に関して質問があります。わたしはフランクリンプランナーという手帳を使っています。自分の価値観→目標→日課 という考え方は合理的で、なるほどなるほどと納得しながら使っています。
ところが、価値観・目標までは自分の中でもしっくりくるようにセルフミーティングできているのですが、日課に落とし込むところが苦手のようです。

日常業務を日課に書くのは簡単ですが、重要事項も今日の日課に書き込もうと意気込んでやっているのですが、ちょっとでもズレ始めたらもう大変。やっていない仕事ばかりが目について、かえってテンションが下がり、手帳を見たくなくなってしまいます。武沢さんは、そのあたり、どのような業務管理や時間管理をされているのでしょうか?

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まずは、すばらしいご質問に感謝したい。

ルーチンワークをこなすだけの仕事ならば、こうした問題に悩むことはない。だが、プロジェクト管理においては、アイデアを実行に移す際にルーチン業務とは違った仕事の進め方があるはずだ。それを、技術と心構えの両面からみてみよう。
重要度としては技術:心構えは1:9程度ではないかと思っている。

まず技術に関して

「タスクをブレイク」するという概念が大切となる。大きな仕事のかたまりである仕事も、細分化していけば、限りなくTO-DOリストと同じような具体的な行動ステップ表になるはず。そうした表を、一案件につき一枚の用紙に書き出す。
それを縮小コピーして手帳に挟み、今日の日課のほうに転記すべきはする。それだけで、未来のための行動を今日の日課に落とし込むことが可能になる。つまり、技術的にはさほど大した問題ではないのだ。

次に心構えに関して

こちらの方が大切だ。
これに関して、昨日から読み始めた『ザ・プロフィット』(ダイヤモンド社)の中に興味深い一節を発見した。
それは、何らかのイノベーションの上に構築されるビジネスにとって最大の試練は、苦役、つまり退屈な仕事であると著者は語る。

それを具体的に補うために、同著では「ダイヤモンド・ハーバードビジネス 1990年7月号」で発表になった次のインタビュー記事を引用している。発言者は、レイケム・コーポレーションのCEO、ポールクックだ。

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「イノベーションの正否を分けるのは、単調な骨折り仕事をマスターできるかどうかだ。創造のプロセスは通常は輝くようなアイデアから始まる。このすばらしいアイデアに見込みがあれば、次にはビジネスの見地からみて進める価値があるかどうかを決定する。このあたりは心躍る部分だ。知的には恐らくもっとも刺激的であろうが、同時に比較的容易な部分でもある。

 続いて、そのアイデアを実行段階に引き下ろすという現実的な仕事がくる。これが、イノベーションの中で最も単調な部分であり、人々に対するプレッシャーや鼓舞のほとんどはここで必要になる。新しいアイデアについての当初の興奮を思えば、どんなエネルギーでも生み出せると考えるかもしれないが、その後、そのアイデアを反復生産可能な製品に転化しようとする過程で、人々は穴蔵にもぐりこんだような仕事を長期間続けることになる。」

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以上、『ザ・プロフィット』より引用。


発言者のクック氏によれば、実行段階では、現実的な仕事が単調に長期間続くと述べている。

だが、私流に言わせれば、それは一部分に過ぎない。新しい挑戦が伴う仕事には、ルーチン業務とはまったく別の精神的エネルギーが求められる。

新しい挑戦は、ただ不慣れであるというだけの理由で困難に感じたり、面倒くさく感じる仕事がかたまっている。何かあれば、すぐ後延ばしの誘惑にかられる仕事でもある。そんな性質が新しい仕事には備わっているのだ。
それに立ち向かうためには、冒頭の中内氏の言葉にあるような、仕事への創造的姿勢や、苦役に負けないだけの精神的ねばり強さ・タフさが問われているということを忘れてはならないのだ。

“面倒くさい”から逃げるな!今週もがんばろう!