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市場経済に生きる覚悟

Rewrite:2014年3月26日(水)

「市場経済」という単語が使われることが多い。経営者として、この用語を漠然とした理解で済ませておくことはできない。「市場経済」とは、すべての物・サービスに値段が付けられる経済の仕組みのことで、その値段は市場において需要と供給のバランスで決められる。それに対して国家や一部の組織が価格を統制しようとするのが「計画経済」である。

当然ながら資本主義のもとでは「市場経済」のもとでビジネスが行われるわけだが、戦後間もないころの日本および諸外国は、「自国内市場経済」とでも呼べる変形版であった。それを1995年に発足したWTO体制のもとで国際的な市場経済を作りあげようというわけである。

韓国の金大中大統領が、1998年10月に大阪を訪問した際に語ったスピーチがある。その中で、これからの「市場経済」の方向を見事に表現しているくだりがある。少し長いが、引用させていただく。

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(前略)
市場経済とは何でしょうか。競争力のある者が勝ち、競争力のない者が負けるべきです。一番良くて、一番安いものを造る人が成功すべきで、一番良くて一番安いサービスを提供する人が成功すべきなのです。二等品は要りません。国民達にも話しましたが、国産だけを利用することが必ずしも愛国ではありません。一等品を造れなかったら、その企業はこれから生き残れません。

過去には、自分の民族を中心とする国境を作り、国民経済をするときは国産品愛用の意味がありました。しかし、WTO体制下では、これから約5-6年過ぎれば、完全に国境がなくなります。このような中で、二等品を作っていては、それは国民の負担にしかなりません。他の一等品に勝てません。経済とは一番良くて一番安い一等品を作っておいて、それをもって他の国に売り、金を儲けて、我々が作れない他の国の一番良くて一番安い一等品を買って消費者に与える時代です。そのように、サービスをする時代です。このようにして、この経済が完全に市場経済の原理で行かなければなりません。そのかわり、そうなった時、その競争に敗れた人もおります。社会的にいろいろと困難な人もおります。これは、社会補償制度で解決してあげねばなりません。経済を社会政治と混同してはいけません。
私は、韓国で中小企業も競争力のある企業を支援すべきで、競争力のない中小企業は他の方向に転換させるかすべきで、そのまま中小企業だからと言って何でも社会事業するように助けるのは我が国の経済を滅ぼすことだと話します。
(後略)
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そして、その後の韓国企業の躍進が始まった。
日本マクドナルドの創業者・藤田田氏は、『勝てば官軍』という本を書いているが、このタイトルこそズバリ、市場経済の本質かも知れない。「負ければ賊」なのである。今さらそんな当たり前のことをなぜ言うのか、と思われるかも知れないが、決して今までは当たり前ではなかったからだ。政治家や経営者といった指導的立場にある者のみならず、国民一人ひとりが市場経済に生きる覚悟を持たねばならないのである。