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続・ある仕出し企業のイノベーション

Rewrite:2014年4月2日(水)

前回のつづき。

3.価格
・この会社の価格を他社の弁当と比較調査してみた。すると、かなり高い水準にあることが分かった。最初は「値段の高さで他社に負けているのではないか」という意見も営業の一部で出た。だが、それ以前の問題として新規客との商談件数が目標に至っていないことから、価格競争力の問題はなく、社長は“価格は据え置く”と意思決定した。

4.売り方・売らせ方
・ミーティングにおいて、「あなた方の動き方は今が最善なのか?もっと良い方法がないか?」と営業スタッフに問いかけた。
何が問題か、絞る前にすべての問題を棚卸しした。すると皆が、もっと効率的に動くにはどうすべきか、アイデアをもっていた。その案を実現するための障害を書き出し、やれることからひとつずつ実行していった。
また、チームとして営業部門全体を見渡し、もっとも効果的と思われる役割分担や連係プレイの方法も議論し、実行に移した。

さらに、外部の企業に営業協力をしてもらう方法を考案した。独自の紹介制度だ。顧客や取引先などから見込客を紹介していただくもので、300件にFAX依頼した。今のところ一件しか紹介が出ていないが、ゼロでないことが分かっただけでも成果といえる。今後改良を加えて継続実施することが決まった。

5.人事面
・製造部門の管理者を補充した。製造業で品質管理に携わったことがある人材で、そのノウハウを我社流に焼き直してくれるよう社長から特命がおりた。また、営業社員のうち一名を解雇した。
これは自社製品や会社そのものに対して誇りをもっておらず、何度本人と話し合っても社内外で悪口をいうクセが直らなかったからだ。所定の手続きを経て解雇し、替わって営業部長自らが面接した人材を一名採用した。
解雇に際して社長は、助成金などがもらえなくなることを理由に解雇を避けたがっていた。だが、そうした甘い考えを断ち切り、会社再生のために打つべき手を打とうと決心された。

6.顧客管理
・顧客から入る毎日のオーダー数をコンピュータで記録するようにした。これによって個別企業のオーダー数の変化が毎日把握でき、いち早く対応できるようにした。毎日30食の注文がある会社が、ある日突然20食になることがある。それは、他社弁当の試食などが入った可能性が高い。すぐに営業がフォローに出向くことになる。今まではそれすら気づくことがなかったので大きな前進だ。

また、初の試みとして顧客アンケートを実施した。味や配達員の応対、その他望んでいることを聞き出した。すると、弁当を毎日納品してくれるついでに、のりのペーストやコーヒー、インスタントラーメンなども頼みたいという要望があることが分かった。今はその対応にも着手している。

こうして矢継ぎ早に社長は意思決定し、皆で実行に移した。その結果、半年ほどで過去最高水準の月次決算になったわけだが、これは社長とナンバー2との信頼関係が厚いことと、勇敢な決断力のたまものである。

こうして、会社全体がマーケット指向になってダイナミックに変化したとき、必ず活路は開けるのだ。