★テーマ別★

ウエルチ流

Rewrite:2014年4月1日(火)

米国企業GEのジャックウエルチ氏が65歳で会長を退き、後任に45歳のイメルト氏が就任した。(2001年当時)

「火の玉ジャック」「中性子ジャック」など数々の異名をとってきたウエルチ氏は、間違いなく20世紀を代表する名経営者の一人だ。とはいえ、氏の業績の最終評価が定まるのはこれからだ。後継者イメルト氏の手腕にかかっている。なぜなら、経営者にとって最後で最大の仕事が後継者の選抜にあるからだ。

ウエルチは、会長在任期間20年のなかで、古びた巨大企業GEを筋肉質で戦闘的な高収益企業に変質させることに成功した。
そして後継者選抜期間には数年の歳月を費やし、イメルトを選んだ。

製造部門の経験しかないイメルトが、果たして金融部門や放送部門などのサービス事業でも求心力を発揮できるかどうかは未知数だと言われる。だが、ウエルチはイメルトのデジタル変革能力を高く評価した。
イメルトは、あらゆる業務のデジタル化を通して2年間で30億ドル強の合理化を進める方針で、この金額は2000年の純利益127億ドルの1/4に相当するという。

GEではすでに、部品や資材メーカーからの調達を「逆オークション」の仕組みで行っている。今年の調達額は120億ドルで、「逆オークション」によって前年比6億ドルのコスト低減に成功した。
また、設計データの共有化などで開発コストを下げ、生産現場を効率化する「e―メイク」でも年間10億ドルを削減した。来年以降は代金決済、アフターサービスなどにもネット利用を拡大しコスト削減幅を広げていく。IT投資は文字通り「儲かる」ということを最も如実に証明した企業がGEなのかも知れない。

さてそんなウエルチ氏の仕事術に関する興味深いエピソードがある。「Newsweek」誌に掲載されていたものだ。

ウエルチが購買部門にある仕事を指示した。何週間か過ぎたある日、ウエルチは会議でその仕事の進捗状況を尋ねた。しかし、仕事はまったく進んでおらず、部下たちは分析作業と他部署との調整をだらだらと続けていただけだった。ウエルチは激怒した。こういう仕事ぶりをもっとも嫌うのがウエルチだ。突然、会議を打ち切り、4時間後に再開すると宣言した。そして再開後の議題は「進捗状況の報告だ」と告げた。
そして4時間後、ウエルチは望み通りの報告を受けた。この4時間でそれまでの数週間よりも仕事は進んだのだ。

ウエルチのリーダーシップの一端をかいま見るエピソードではなかろうか。
私たちは部下や他人の仕事ぶりに対して妥協が多すぎはしまいか。部下が仕事を通して潜在能力を発揮することに遠慮はいらないはずだ。約束が守られなくても、それをとがめるものが誰もいないような組織では人は育たない。まず組織としての“たが”をきっちりと締めることをやり切ったのがウエルチ流経営の本質だと思う。