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人が「英雄」になるということ

Rewrite:2014年3月30日(日)

英雄が生涯を通してずっと英雄であり続けたことはなく、人生のある期間においてきわめて英雄的であったにすぎない。
ここぞっ!という時のふんばりが勝負どころなのである。司馬遼太郎の『坂の上の雲』に登場する松山藩の秋山兄弟、兄の好古、弟の真之は、ともにの軍人として日本を救った。この二人は、日露戦争での陸軍と海軍の英雄になったのだ。

兄・好古の人生は、45才の時の大活躍で評価が決まったといってよい。実戦経験がない日本の騎兵集団を好古が指揮し、世界最強のロシア・コサック騎兵団を撃破した。
弟・真之は、バルチック艦隊を日本海海戦で撃沈した作戦主任参謀だ。司令長官の東郷平八郎を補佐し、「本日天気晴朗なれど波高し」の打電文でも有名だ。兄弟ともに、「ここぞっ!」というときに決めたことが歴史に名を残すことにつながった。

余談めいた話ながら、弟・真之が病死したときの追悼会の席上、兄の好古は、次のように語っている。

「弟真之には、兄として誇るべきものは何もありません。が、しかし、ただひとつ、わたくしから皆様に申し上げておきたいのは、真之はたとえ秒分の片時でも、『お国のため』という観念を捨てなかった。四六時中この観念を頭からはなさなかったということです。このことだけははっきりと、兄としていい得ることです」

私たちにとって「ここぞっ!」という時がいつなのかは分からない。
今日がその日かもしれないし、来月なのかも知れない。しかし、いつであろうとも秒分の片時でも忘れていけないことがある。それは、平凡を拒否し、偉業をなし遂げようと言う熱い気持ちだ。小成に甘んじることなく、絶えず最善を自分に要求することだと思う。そうした人生に対する姿勢が「ここぞ」という時に生きてくるのであろう。