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続・経営計画3題

昨日のつづき。

講師業の U さんは受託業務の会社なので、「売上げは受注いかんで決まるので経営計画を作っても意味がない」と思い込んでおられる。
受託であろうが、個人事務所であろうが、なにも関係ない。
独立企業としてやるべき課題は無数にある。
それらを計画にしていく必要があるのだ。

たとえば、クライアントの数を増やすにはどうすべきか。
クライアントからの発注件数や発注単価を上げるにはどうすべきか。
今後のメニュー開発はどうするか。
売上げや粗利益を増やすために何をするか。
利益や資金の見通しはどうか。
仕事や時間の生産性を上げるために何をするか。
スキル向上のために何をするか。
それらを考えるだけで優に10ページを超える計画書が作れるはずだ。

私の知人の会社は、販売先を一社に絞ってから躍進が始まった。
世間常識は客数を増やさないと経営は安定しないと言われるが、あえて真逆の戦略をとった。
立場は下請け製造業だが、元請けメーカーの信頼をがっちりつかむことに成功し、業績は好調だ。
経営計画書は何年も前から作りつづけ、何百名もの社員全員を集めた発表会を毎期開催しておられる。

お二人目の農業系法人の専務は「まだ社長ではないし、目標に向かって一致団結する社風でもないので、経営計画は時期尚早だ」と言われた。
それもひとつの錯覚というか、思い込みである。
「時期尚早」というものがあるとすれば、それは「経営計画発表会」の開催だけで、経営計画書が時期尚早な会社など一社もない。
たとえ自宅でひとりで開業したとしても、自分自身のために経営計画書を作る必要がある。

三人目の方は「目標設定」そのものに対する誤解か偏見があるようだ。
未達成が続くと自信をなくす、ということだが、目標設定は本来自信をつけるために行う。
仮に結果として未達成が続いたとしても、目標を追いかけることで成長がある。
・目標を作らずに動いていたらどうなったか
・目標を作って動いた結果、どうなったか
それを対比してみることで経営計画を作ることの価値が理解できるだろう。

鉄道時刻表のような正確さが求められるのではない。
コンパスの役目を果たすのが経営計画書なのである。
したがって長期のコンパス「経営理念」、中期のコンパス「経営戦略」や「経営方針」、短期のコンパスが「個別計画」ととらえ、一貫して計画的に動くのである。
そのための最強のツールになるのが経営計画書だ。

我が業界は変化が激しいので計画はその通りにならず、作っても意味がないと考える経営者がいる。
その反対に、変化が激しいからこそ計画を作り、定期的に立ち止まって進路を点検しないと変化に翻弄されてしまうと考える経営者がいる。

最終的にはどれを選んでも自由なのだが、私は後者の立場だし、縁のあった方にもそれをおすすめしている。