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日本とアメリカの株主対比

活況の証券市場にあってネット証券会社がシェアを高め、店頭証券会社が苦戦を続けている。かつて証券市場において圧倒的な存在感を誇った野村證券といえども苦戦は例外でなく、幾度となく経営危機がささやかれた。

その影響だろうか、一昨日、野村證券を傘下にもつ野村ホールディングスの株主総会が行われ、大いに荒れたようだ。
株主のひとりが腹いせ混じりにこんな議案書を提出したというのだ

1.オフィス内の便器は全て和式とし、足腰を鍛錬し、株価四桁を目指して日々ふんばる旨定款に明記するものとする。
「今が『ふんばりどき』であり、和式便器に毎日またがり、下半身の粘りを強化すれば、かならず破綻は回避できる。

2.(経営が不透明だから)取締役の社内呼称を「クリスタル役」とし、代表取締役社長は「代表クリスタル役社長」と呼ぶ。
取締役会がその機能を十分に果たしていないのだから、呼称などいい加減なものでいい。貴社はいままさに破たん寸前である。
今が『ふんばりどき』。

などと、檄を飛ばしている。
苦境にありながらも経営陣の1人あたり平均報酬額は約1.6億円と、前年より約8割増えているだけに、株主の怒りは収まらないようだ。

もちろん総会ではこれら議案がすべて却下されたが、「これは新手の総会屋ではないか」「ふざけている」という声がある一方、ふんまんやる方ない株主たちの本音でもある、と擁護する声もある。

こうしたケースが増えるのを懸念せざるを得ない。株主がモノ申すのは大いに結構で企業がそれを弾圧すべきではないが、このレベルのものを株主総会に提出されることに違和感があるのだ。日本の株主総会ってこの程度なのかと世界の投資家から笑われるのがオチだ。

アメリカ食品販売チェーン8位の「ホールフーズマーケット」の第2位株主として「ジェナパートナーズ」が全株式の9%近くを取得したと発表されたのが今年4月。ジェナ社は「物言う投資家」として有名なヘッジファンドで、彼らが大株主になったことで、ホールフーズ経営陣は経営改善の圧力を受けるだけでなく、売却など身売りの可能性もでてきた、と報じられた。

ちなみに「ホールフーズ」の年商は約1.8兆円。日本の伊勢丹や三越より大きく、ユニクロ程度の年商規模をもつ。
そして今月、そのホールフーズをアメリカのアマゾンが1.5兆円で買収すると発表した。物言う投資家が株主になってわずか2ヶ月のことである。いかに株主の影響が強いかを感じる出来事だった。

日本の株主が情けない、ということを言いたくて日米株主の対比をしたわけではない。
適度な比率で外部株主をもつことが企業の健全性を保ち経営陣に緊張感をもたらすはずであるということが今日の意見その1。
その2は、株主としてモノを言うのであれば経営陣を皮肉るだけでなく、建設的な提案をするか、総退陣を要求するほうが株主自身のためになるということである。