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崩れた神話 その2

一昨日のマガジンの続きから。

神話5:ビジョナリー・カンパニーは、だれにとってもすばらしい職場である。

現実
ビジョナリー・カンパニーは、その基本理念と高い要求にぴったりと「合う」者にとってだけ、すばらしい職場である。ビジョナリー・カンパニーで働くと、うまく適応して活躍するか(それ以上にないほど、幸せになるだろう)、病原菌か何かのように追い払われるかのどちらかになる。その中間はない。
カルトのようだとすら言える。ビジョナリー・カンパニーは、存在意義、達成すべきことをはっきりさせているので、厳しい基準に合わせようとしなかったり、合わせられない者には、居場所はどこにもない。

社員の定着率の高さを誇ることはできないし、その逆をなげく必要もない。
むしろ誰も辞めない会社の方が危険だ。私のマガジンも毎日何人かの読者が減る。新規に登録される方と相殺して純増しているが、誰も登録を解除しないマガジンではいけないと思っている。

神話6:大きく成長している企業は、綿密で複雑な戦略を立てて、最善の動きをとる。

現実
ビジョナリー・カンパニーがとる最善の動きのなかには、実験、試行錯誤、臨機応変によって、そして、文字どうりの偶然によって生まれたものがある。
あとから見れば、じつに先見の明がある計画によるものに違いないと思えても、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」方針の結果であることが多い。この点では、ビジョナリー・カンパニーは、種の進化によく似ている。ビジョナリー・カンパニーのような成功を収めようとするなら、チャールズ・ダーウィンの『種の起源』の概念の方が、企業の戦略策定に関するどんな教科書よりも、役に立つ。

戦略のなさを反省する前に、変化を歓迎してトライアンド・エラーをくり返す社風を作ることが先決ではないか。

神話7:根本的な変化を促すには、社外から経営者を迎えるべきだ。

現実
ビジョナリー・カンパニーの延べ千七百年の歴史のなかで、社外から経営者を迎えた例はわずか四回、それも二社だけだった。ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業と比べて、社外の人材を経営者として雇用する確率が六分の一しかなかった。根本的な変化と斬新なアイデアは社内からは生まれないという一般常識は、何度も繰り返し崩されている。

神話8:もっとも成功している企業は、競争に勝つことを第一に考えている。

現実
ビジョナリー・カンパニーは、自らに勝つことを第一に考えている。これらの企業が成功し、競争に勝っているのは、最終目標を達成しているからというより「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるか」と厳しく問い続けた結果、自然に成功が生まれてくるからだ。そして、この問いかけを生活の習慣にして、ずっと続けてきた。どれほど目標を達成しても、どれほど競争相手を引き離しても、「もう十分だ」とは決して考えない。

以上ご紹介したのは、日経BP社の「ビジョナリーカンパニー」からの要約だが、同書では12の神話となっている。あとの4つは、

◇神話:「変わらない点は、変わり続けることだけである」
◇神話:「優良企業は危険をおかさない」
◇神話:「二つの相反することは、同時に獲得することはできない」
◇神話:「ビジョナリーカンパニーになるのは主に、経営者が先見的な発言をしているからだ」
となっている。より詳しくお知りになりたい方はご一読をおすすめする。

世界的な優良企業の話をいくら読んだところで参考にならない、と言われるかも知れないがそんなことはない。
こうした経営書のなかには大別して2種類の本がある。ひとつは、文字通り大企業向けに書かれた本。そしてもうひとつが、中小企業向けに書かれた大企業(優良企業)になるための本である。この本はその後者だ。