Best of がんばれ!社長  武沢 信行

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続・続・北条建機の未来戦略

      2016/08/31

「北条建機の未来戦略」に寄せられたご意見のうち、「がんばれ!社長」でご紹介した 5人の方には 2013年版マンダラ手帳を今日、発送させていただいた。
中国在住の方は数日、国内の方は一両日で届くと思うので、楽しんでお使い願いたい。

さて北条建機(仮名)の北条社長を議長とする経営会議では、その日、何を意思決定したのだろうか。
結論から先にいえば、財務部長案が採用されたのだった。すなわち、「今こそネットに投資し、顧客第一主義という理念を具体的な形でサービスにしよう。北条しかやっていないという顧客サービスを開発することによって、もともとしっかりしている製品力にプラスアルファの付加価値を付け、他社との差別化を計っていこう」という戦略である。

最初は否定的な意見も出た。
特に専務は、なにを誤解したのか「今さらネットだなんて。ネットで油圧シャベルを買ってくれる人がいるのかい?」と冷淡だった。しかし、ネットで製品を売ろうというわけではない。
北条社長が強く財務部長案を支持した。なぜならかねてより業界大手のコマツが開発した「KOMTRAX」(コムトラックス)を羨望のまなざしで見ていたからだ。

IT と建機が組み合わさるとどんな事が可能になるか。

iPhone や iPad をどこかへ置き忘れたり盗難にあっても、電源さえ入れば場所がすぐ分かる。GPS を許可している国であれば世界中どこでも居場所が判明するのだ。それは端末の中に入っている小さなセンサーがGPS(全地球測位システム)とつながっているからである。

iPhone 探しと同じことが建機でもできる。
コマツが 90年代から開発に取り組み、2000年からサービスを開始した「KOMTRAX」も、もともとは盗難防止用のシステムだった。
だがそこから派生してあらゆるすごい事ができるようになってきた。
その結果、いまでは「KOMTRAX」を利用したいためにコマツ製品を指名買いする顧客が増えてきたという。

「KOMTRAX」でどんなことが可能になるか。

・ニューヨークやインドネシアで動いている建機の稼働状況を東京の本社で確認できる
・夜中に時速 40キロで移動していたら、すなわち盗難を意味する。なぜなら建機はそんなにスピードが出ない。そんな時には、いち早く警察に通報し港に先回りしてもらって逮捕する。その結果、コマツ製品の盗難率は下がり、建機の保険料も下がった。
・外国の顧客のなかには代金を支払わない企業や個人が多い。そこで、「KOMTRAX」にエンジンを停止するシステムを導入し、遠隔操作によってエンジンがかからないようにした。その結果、代金未回収事故が減った。
・機械にトラブルがあるとすぐにその情報がコマツの集中管理室にいるスタッフに分かる。ユーザーは故障の連絡をコマツにする必要がない。コマツの「KOMTRAX」では、ユーザーの建機だけでなく、自社のサービスカーの巡回状況も把握しているので、最寄りのサービスカーに故障情報を伝え、すみやかに必要部品を現場に届ける。
・故障する一日前に予防。故障の前ぶれになる予兆をつかむことで、故障前にサービススタッフが駆けつけることもできる。たとえば、エンジン水温の上昇は重要な故障シグナルだが、そうした保全のための情報も「KOMTRAX」で分かるようにしている。
その結果、コマツの純正部品が定価に近い価格で買ってもらえるようになり、それでもユーザーはコストダウンできる。
もし純正部品が外されて他社製の部品が取り付けられたら、それも「KOMTRAX」で分かる。コマツは純正部品の年商が約 3,000億円あるが、その利益率は高い。
・世界中でどの機械がどの程度稼働しているかを把握することにより、今後の需要予測も分かるようになった。景気の変動は建機の稼働率に反映するからである。
それを今後の生産計画や経営計画に反映させられるようになった。
・ライバル企業も同様のシステムを開発している。しかし、それらは有償であったり、情報がコマツほど詳細ではないことなどから、他社製の機械に
「KOMTRAX」を付けてほしいといわれるほど。だが他社製品には「KOMTRAX」を搭載しない方針を貫いている。

★コマツの「KOMTRAX」
→ http://www.komatsu-kenki.co.jp/service/product/komtrax/

コマツはかつて、トヨタの戦略を参考にしたという。もの作りだけでなく販売力を高めるための戦略として、ファイナンス、中古、レンタル、サポートなどに力を入れた。

その後、2008年からはブランドマネジメントのあり方を変えた。それは、一般消費者にコマツの名前を覚えてもらうことではなく、ユーザーが「コマツでないと困る度合いを高めること」に戦略をシフトした。
その基盤が「KOMTRAX」である。

こうした15年、20年の格闘の上に今日のコマツがある。車と IT の関係に力を入れるトヨタが今度はコマツから学ぶことになるかもしれない。
コマツにせよ、北条建機にせよ、規模こそ違えども建機の製造販売というビジネスモデルは同じである。
だが、10年後も 20年後も、いまと同じビジネスモデルである可能性は高くない。ハードウエア作りに妙味がなくなり IBM がパソコン作りをやめたようにコマツや北条が建機作りをやめないとは限らない。
どうなるかは分からないが、そうした選択肢が選べるような状況になっていることが重要なのである。

さて、北条建機。
今から「KOMTRAX」と同じことを国内メーカーの北条がやろうというわけではないらしい。
だが、顧客の現場にさらに近づくためには「KOMTRAX」のようなシステムを開発することが不可欠であると経営陣は判断した。あとは、コストと時間をどこまでかけらるのかを判断することになる。

参考:『なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編
山田英夫著、日本経済新聞社
→ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=3439

【編集後記】

◆数えてみたら「忘年会」があと八つもあります。逆に「新年会」は三つしか入っていません。

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