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紹介獲得物語

「いいか諸君、よ~く聞け!」

191センチ、100キロの巨躯をもつ岡三住宅産業(仮名)の岡本三郎社長(44才)は、全社営業会議で号令を発した。

「最近、徐々に徐々に紹介比率が減ってきている。お客さんから別の新たなお客さんを紹介してもらい、それが売上につながったケースは昨年で5%しかない。何やってんだ、お前ら!と俺は言いたい。残りの95%は飛び込みとDMとチラシだ。そんなにお前たちはお客さんから信用されていないのか!それとも“紹介は要りません”とでも話しているのか!紹介が5%なんてないに等しい。」

東京に本社、支社が大阪と名古屋にある岡三住宅は岡本社長が25才で創業して間もなく20周年。たぐい稀なる営業力と横柄ながらも魅力的な人柄でお客と社員から人望を集めてきた。

「またこれか」

営業部長を兼務する岡本五郎専務は内心でつぶやいた。「兄貴、いつものことながら会議の冒頭社長あいさつでは、やっぱり叱責だ。カミナリ落としてから始めるのも考えものだなぁ。」

業績は決して悪くない。一度も赤字決算を出したことがないのだ。15年ほど前から力を入れてきたリフォーム受注のノウハウがしっかりしているのと、インテリメガネをかけた営業部長の五郎専務が、やや粗雑な兄・三郎をしっかりと影で支えているからだ。

会議は終了した。兄に呼ばれた五郎専務は、社長室に入るなりこう言い渡された。

「専務、紹介獲得に動いてくれ。オレ達が二人で始めたときは全部が紹介だっただろう。なのに今はどうして普通の会社みたいになってしまったんだ。あいつら単なるサラリーマン・OLか?そうじゃないだろう。可愛いかわいい岡三マンじゃないか。いつ独立したってきっちりやってゆける人間に育ててあげることが大切だろ。どうしたら紹介をもらえるか、プロジェクトでも作って早急に対処してほしい。あいつらのためなんだ、これは。そして明日の岡三のためでもあるんだ。」

専務と二人になると「あいつら」と社員を呼ぶ。この言葉が出るときは社長・専務ではなく、兄弟での会話だと暗黙のうちに二人の了解があった。

真夏の45日が経過し、2002年も赤とんぼが散見される季節になった。
「紹介獲得プロジェクト」のメンバー6人とオブザーバーの五郎専務は、第一回めのレポートとして活動計画を社長に提出した。

それによると、

<数値目標>

1.2003年12月31日の時点で、直近一年間の総売上に占める紹介売上比率を25%にする。(現在5%)

2.成約に至らないケースも含め、2003年の一年間において獲得紹介数は300名とする。(現在30名)

<行動計画>

1.紹介キャンペーンの実施
年に4回、全社的紹介気運向上のために大々的キャンペーンを実施する。それに投じる費用は、年間で500万円とする。

2.紹介獲得マニュアルの作成
営業マンが顧客の前で紹介依頼をする際につかうトークを練り上げる。

3.紹介謝礼制度の整備
紹介謝礼が非公式に存在したものを公開し、むしろ積極的に謝礼を全面に出して紹介獲得につとめる。

4.紹介マイレージ制度の創設
新築・リフォームを問わず、紹介下さったお客様のなかには謝礼を好まない方も多い。そこで、独自のマイレージ制度を用意  し、ホームページと郵便を使ってポイントを貯めるムードを盛り上げる。

のんびりした仕事が大嫌いの三郎社長は、この計画書にゴーサインを出すとともに、すべての行動計画を30日以内にやり終え、実施に移るよう専務に指示した。そしてそれは、粛々と実施された。

ところが、あれから3ヶ月を経過し、四半期を終えたにもかかわらず紹介獲得の結果が何も出ていない。

なぜだ・・?? 五郎専務はあわてた。

<明日に続く>