「風邪をひいたら練習に行かせてもらえない。いくら自分で『もう大丈夫です。』と言ったところで、完全に直らないかぎりレッスン場には入れないのです。」と語るYさん。彼女が習っていたバレーの話だ。
うん、この話、明日の原稿のヒントになると思い、以下その原稿だ。
ベストコンディションでない限り、お互いに良い連携をとることがむずかしい。5人の組織として、最後の5人目が風邪をひいて調子が悪いとしよう。計算するとこうなる。
普段のとき 10+10+10+10+10=50
一人が風邪をひいた 10+10+10+10+5=45
普段のときが「50」なのに一人が風邪をひいたおかげで「45」になってしまった。全体の戦力が10%低下したわけだ。
もう一つの見方がある。組織は足し算ではなくかけ算だというもの。
・普段のとき 10×10×10×10×10=100,000
・一人が風邪をひいた 10×10×10×10×5=50,000
普段が「10万」なのに、一人が風邪をひいたことで「5万」に低下した。この場合は普段からみて5割も戦力ダウンしたことになる。
あなたの職場では誰か一人が風邪で休むと1割ダウン、それとも5割ダウンどちらが実感をともなうだろう?当然、企業規模が大きくなれば足し算的になり、少人数であればかけ算的な感覚をもつに違いない。また高度なレベルで役割分担が行われている場合も同様だ。たとえば個々に異なる専門家集団であったり、プロ野球のように守備位置が明確に違う組織の場合、仮に投手役がとつぜん休んだら試合すら成立しない可能性がある。
このように、組織にあってはひとり一人がコンディショニングに関するプロ意識をもたなければならない。私がささやかながらシーフード・ベジタリアンを心がけるようにしたのもそうした考えが背景にある。
しかもベストな状態が求められるのは、フィジカル(肉体)だけではない。メンタル(精神)にも求められるのだ。イライラしていたり、不愉快な気分でいたりすると、それは伝染病のように周囲に広がっていく。陽の気と陰の気があるならば、陰の気のほうが伝染力が強いようだ。
個人の問題だけではなく、チームのムードというメンタルもある。要するに人間関係や信頼関係のコンディションが良いか悪いか、という問題だ。
昨日私は東京に向けて旅立つ直前にスタッフとトラブってしまった。
トラブルの主原因は、私の仕事の遅れだ。これさえなければ、そもそも今回のトラブルは発生していない。
仕事の遅れを取り戻すために、私はスタッフに対して幾つかのリクエストを出した。この段階でトラブルの二つめの原因が地雷装置として埋め込まれたようだ。リクエストの出し方が合意不十分。事は急を要することが理解されていなかった。急ぐという気持ちは共有していたが、私の期待する最終期限は、月曜日午前中だったにもかかわらず、スタッフは火曜日中に終えるための段取りを組み、私のためにほかの仕事を優先して気を回してくれていた。
つまり、その仕事に関しては私が期待する納期や品質ではない仕事が行われることとなった。
もともとも遅れていたものが、この出来事でさらに遅れが重なった。それを知った私は感情的になって「なぜなの?済んだことは仕様がないから、とにかく今日中にはすべてを終えるように!」と待ったなしの指示を出した。
スタッフは、何一つ反論はしなかったが、すごく悲しそうに私に背を向けた。何かがおかしい、ふだんのベスト状態ではないと思った。
このトラブルの三つめの原因は、私のイライラだ。メンタルがベストでない状態にあるのを気づかず、感情的になって選択権の余地や自由裁量の余地を与えない作業指示を出してしまったようだ。
今日からやるべきことは四つある。
まず一つは、すぐに私とスタッフは話し合い、今のきまずい関係を修復することだ。私とスタッフとは、対面して向かい合う関係にあるのでなく、横に座って同じ方向に歩んでいるのだということを確認するつもりだ。
二つめは、リクエストの出し方やその確認方法の仕組みを作り直すこと。口頭で「頼むよ」「はい」というだけでは済まない仕事も多い。充分に話し合って双方が理解を確認する。あるいは紙に書いたもので確認するなど、新しいコミュニケーション手段が必要になる。とくに、待ったなしの一方通行的な指示は、二度と出さないで済むようにしたいものだ。
三つ目と四つ目は私個人の問題だ。そもそもの原因となった仕事の遅れを今後はどう防ぐのかという大テーマと、感情的発言をしないということだ。
このスタッフの協力なしでは私は成り立たない。今から名古屋に戻って話し合う。