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ナスからナサへ

●今日の「スペースシャトル打上延期」の報道に、私は肩すかしをくらってしまった。たった一日の延期なのだから楽しみが伸びただけなのだが、今回の若田光一さん搭乗には人ごとではないエピソードが隠されているのだ。

●最初「ナスからナサへ」と聞いたとき、なんのゴロ合わせだろうと考えてしまった。だがすぐに「なるほど、そうか!」と合点がいった。

「那須」(栃木県那須塩原市)から「NASA」(アメリカ航空宇宙局)へ、という意味らしい。

●口ぐせのように「那須からNASAへ」と唱えてきたのは株式会社パン・アキモトの秋元義彦社長。このパン屋は「すごいパン屋」なのだ。

何がすごいか、おいおいお分かりいただけると思う。

●那須塩原といえば、大自然と豊富な温泉に恵まれた風光明媚な土地柄。そこに本社をかまえる「株式会社パン・アキモト」は62年前に先代が創業し、秋元義彦現社長は二代目になる。

●地域に愛されるおいしいパン屋さんとして、直営店での販売の他に、レストランやお土産屋さんなどにも出来たてパンを提供してきた。

そんな「パン・アキモト」にある年、大きな転記が訪れる。
それは、遠く離れた神戸での大震災(阪神・淡路大震災)だった。

●敬けんなクリスチャンでもある秋元社長は、TV画面に流れる神戸の被災姿を見て胸を痛めた。同時に、自分はなにをすべきかを考えた。
集められるだけのパンを集め、新たにどんどん焼いて2000個のパンを調達した。それをトラックに乗せて神戸に届けようと思った。
調べてみたが、許可証がなければ被災地に近づくことはできない。そこでクリスチャンのネットワークを最大限に駆使して、なんと中一日で2000個のパンを被災地のど真ん中に届けることに成功した。

●「良かったぁ」と一息いれたのもつかの間、「カビが生えてる」という声が戻ってきた。

パン・アキモトのパンは防腐剤を使わない。日持ちがしないパンなのに、現地で何日も備蓄したためにカビが生えた。
結局多くのパンが食されることもなく捨てられた。まるで心が切り裂かれる思いがした。

●この事件が秋元社長に新たな挑戦課題を課した。

「長期保存できておいしいパンができないものか」いろいろ研究してみた。

真空パックのパンや冷凍保存のパンなども作ってみたがどれもうまくいかない。ある時、「缶詰にしたらどうだろう」と思いつき、焼きたてのパンを缶詰にしてみた。
三ヶ月後、明けてみたらパンはカビだらけだった。

●「缶詰もダメかぁ・・・」とあきらめかけたとき、缶詰の方にも滅菌がいる。だったら、パンと缶詰を一緒に焼いてみようと思い立った。
生地の状態のパンを缶詰に入れ、缶ごと焼いてみたら大成功だった。

この方法を極めて完成させたのが今日のパン・アキモトの人気商品、「パンの缶詰」なのである。

その後、この製法は、日本・中国・台湾・米国で製法特許を取得した。

●私は昨年暮れに香港で秋元信彦さん(社長のご子息)にお会いした。

「武沢さん、明日の朝、ホテルのお部屋でコーヒーと一緒に召しあがってみてください」と「パンの缶詰」をプレゼントされた。
缶詰はあまり好まない私だが、「話のネタになるかも」と思い、食べてみた。これがフカフカの食感で風味もあってイケる。
おやつにもいいだろう。
3年間も長期保存がきくので防災用品、非常食として売れているそうだし、アウトドアスポーツや狩猟(熊がでるので車内に食品は放置できないが缶詰なら車が襲われない)など、用途は無限に広がっているそうだ。企業ノベルティとしてトヨタ(トヨペット系列)なども利用している。

●そんなパン・アキモトの秋元社長が10年前から言い出したのが「那須からNASAへ」。

リュックサックにパンの缶詰を入れて米国の「NASA」まで直談判に行った。その後も何度か接触をくりかえし、ついに今度、若田光一さんがスペースシャトルに持ち込む食品の中にパン・アキモトの「パンの缶詰」が搭載されることになったという。(100%断言できるわけではない、としているが)

宇宙空間で若田さんが「パンの缶詰」を食べる光景が世界に流れたら
・・・想像しただけで大変なことになる。

10年前は突飛な話だった「ナスからナサへ」、それが間もなく現実のものになろうとしているわけだ。

●「左目で地元を、右目で世界を」それが秋元社長と「パン・アキモト」の信条だという。

あなたもまず「パンの缶詰」、買って食べてみます?

★株式会社パン・アキモト
http://www.nasuinfo.or.jp/FreeSpace/aki_pan/