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敬語とタメ語

演歌の大御所がバラエティ番組に出ていた。楽しい冗談を連発し、司会のお笑い芸人が「あんた、なに言うとんねん」と叩く仕草でツッコムと、当の大御所も楽しそうに笑っていた。
意外な大御所の一面が見られてこちらも笑ってしまった。

だが、もしこの「なに言うとんねん」のツッコミをNHKのアナウンサーがやったとしたら、あるいは、後輩の演歌歌手がやったとしたら、大御所は決して笑わないはず。それどころか激怒するかもしれない。

言葉づかいとは彼我の関係によって許される・許されないということが決まる。
コミュニケーションの達人とは、そうした空気を読みながら変幻自在に言葉を操ることができる人をいう。

そうした中、ときどき「この人、話し方で損してるなぁ」と思う人がいる。その一つが「慇懃無礼」(いんぎんぶれい)に近いタイプ。
丁寧すぎる言葉づかいしかできない人がいるのだ。

「本当ですか、すごくウレシイです!」と言えばいいのに、「それは事実でございましょうか?だとしたら、心より御礼申し上げます」などと言われれば、鼻白んでしまう。

初対面や二度目の相手なら丁寧すぎる言葉づかいも悪くはないが、何度も会っていながらそれでは、なかなか親しくなれない。
むしろ、”あなたと親しくなるつもりはありません”と言われているような気になってしまう。

その逆に、初対面でいきなりタメクチ連発でも困りもの。
アポの時間に遅れてきた営業マンが「いやぁ、ゴメンゴメン。社長、待ちました?」などと言ったら、一発退場ものだろう。

誰もが迷う言葉づかい。

今この場面でタメ語を使うべきか、敬語にすべきか迷ったら、とりあえず敬語で良いと思う。
相手が社内の人間や友人ならタメ語もよいが、社外の仕事相手なら迷ったら敬語が鉄則だ。
あとは、いつどんなタイミングで客先や取引先に対してタメ語を使える関係になるかが勝負。ボクシングや剣道の間合いのように隙をみてつっこもう。

とは言え、若い人はタメ語という応用編に行く前に、まず敬語という基本編がしっかり出来ていることが大前提なのはいうまでもない。

『嫌われる敬語 好かれるタメ語』(内山辰美著、中経出版)という本がでた。⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=1805
一読する限り、「敬語はきちんと出来るがタメ語が使えない」という若い人に向けて書かれた本だと思う。

あなたのまわりにそんな部下がいれば、読ませてあげてはいかが。