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HYな社長

今日の午後はホテルニューオータニで渡部昇一先生の講義がある。
「名将に学ぶ成功哲学」と題した5回シリーズの講義で主催は致知出版社さん。15万円する講座だが、すでに100名の定員は埋まっている。

渡部昇一先生の著作に初めて接したのは1976年(昭和51年)のことだと記憶している。当時大ベストセラーになった『知的生活の方法』である。
大府市(愛知県)の町工場でボール盤を操る社会人二年生だった私は、社員寮の自室でこれを読み、「いつかこんな知的生活を送ってみたい」と痛く感銘したことを覚えている。
あれから32年たったが、74刷りめの同著をいま改めて読み返してみて、自分の勉強の浅さが恥ずかしく思えてくる。
同時に、次の30年をもう一回この本に従ってやり直そうとも思う。

★知的生活の方法 http://www.amazon.co.jp/dp/4061158368/

★渡部昇一先生↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E9%83%A8%E6%98%87%E4%B8%80

20代前半で渡部ファンとなった私は、氏の数々の著書に接してきたが、実は直接お目にかかるのはこの講座が初めてである。
先月行われた第一講座の題材はジュリアスシーザーだったが、2時間前に会場入りし、最前列に陣取って先生の講義を聴いた。
今年78才になられるというが、紺ブレに真っ赤なタイとチーフ。ピンクに染まった頬で登壇された姿はシーザーのように颯爽としておられた。

今日の講座は東郷平八郎であり、東郷さんのように登壇されるのかと勝手に想像していると楽しみが倍増する。

さて、今や書店に行けば整理術や仕事術を説いたライフハック本が人気だが、『知的生活の方法』はその先駆けと言えよう。
その89ページに、「知的生活を守る気概」という見出しで次のような記述がある。

・・・幸田露伴の『連環記』にこんな一節がある。(以下、武沢意訳)

あるとき、お坊さんが紙の冠をかぶってお祓(おはらい)しているのを見た。どうして仏教のお坊さんが神道のお祓いをするのかと不思議に思い尋ねると、「ここのご主人が仏式ではない方法でやってくれ」と言うのでやっているのですと答えた。
「そんなことをしていては地獄に落ちますよ」と戒めると、その僧はくだけた口調でこう言った。

「仰せはごもっとも。しかし浮き世の過ごしがたさでこうしているのですよ。妻子を養い、自分の命をつなぐためにはこうするしかない。幸い自分はまだ上人様として仰がれてもいないし、僧侶の格好はしていてもほんとうは俗人みたいなものですから、さしあたってこんなことをして暮らしているのです」
・・・

「喰うためには仕様がないじゃありませんか」という姿勢に対し、幸田露伴はきつくこう糾弾する。『知的生活の方法』には幸田の原文をそのまま紹介しているが、私は意訳でお届けする。

・・・いつの世にもこういう俗物は多いもので、彼らの言い分を聞いていると、最初はもっともらしく聞こえるものである。しかし、せっかく殊勝な志でもってそれに向かって突進しようとした者が、障害にせき止められて躊躇し、徘徊し、後退するものがいかに多いことか。

額を破り、胸に傷を負うのもはばからずにあえて突進する勇気を欠く者は皆、障害の前で立ち止まる。芸術の世界でも宗教の世界でも学問の世界でも、人生戦闘の世界でも、百人が九十九人、千人が九百九十九人、皆ここで退いてしまうのである。
・・・

知的生活を守ろうという気概がなければ、生活のため、家族のため、子どものため、趣味のためという理由で知的生活が崩れていくことを防ぐことができる。

少なくとも次のような事態は避けられるはずだ。

・結婚したとたん本を買わなくなる
・節約するために本代を減らす
・酒が好きだから帰宅後は本を一切読まない、読めない
・テレビやDVDを見るのに忙しく、本を読む時間が取れない
・子どもが生まれたら子どもとの時間が増えて本を読まなくなった
・スペースがないので、自宅や会社には本棚がない
・昔はよく本を読んでいたが老眼になって読書が減った。そういえば本棚の内容がこの一年、ほとんど変わっていない。

私は主張したい。

KYな社長になるな(空気を読めない社長)
KYな社長になるな(決算書が読めない社長)
HYな社長になるな(本を読まない社長)