(文中敬称略)
勉強は嫌いなので高校へは行かない。身体が大きくてケンカに負けたことがなかったが、中学在学中の 14歳で相撲界に入門したとき「殺されるかもしれない」と思った。まるで歯が立たずコテンパにやられた。持ち前の負けず嫌いで身体を鍛え、心を鍛えていくと日に日に強くなった。前の日と自分の身体が全然違うことを自覚する日もあった。
25歳で幕内力士にまでのぼりつめ、当時人気の絶頂にあった若・貴とも本割りでぶつかった。しかしケガに苦しみ、30歳の若さで力士を引退し、廃業することになった。結婚して子どもができたばかりだった。
相撲の世界とは縁を切り、世間の荒波に放り出された「玉海力」こと河邉幸夫は、先輩力士が経営していたちゃんこ料理店で三ヶ月の修行を積み、自分でちゃんこ鍋屋をはじめることにした。
力士の退職金と貯金を足しても店の保証金で全部消えた。銀行に融資を申し出てもうまくいかない。そんな状況からどうにか広尾に店を出したのは、河邉が 30歳になる秋だった。オープンして最初の一年は失敗の連続で、お客とケンカしてしまったこともある。鍋料理がメインなので春から夏にかけてまったく売上が伸びないことにも閉口した。初めて河邉は、本格的な勉強を始めた。学校の勉強と違って自分のためにする勉強は面白いように身になった。
あれから 19年目を迎えた今期(第 20期)の経営計画発表会が昨日、東京赤坂のインターコンチネンタルホテルで行われた。国内三店舗、海外二店舗の社員全員と来賓を含む 30数名が集まった。司会挨拶のあと来賓紹介、国歌斉唱、経営理念と社訓の唱和とつづく。午後 3時に始まった発表会は、私の激励講演(30分)によって閉会となり、時計をみたら 5時半。その後、ホテルの最上階でのレストランを貸し切って懇親会があった。
以下、いくつか印象に残ったところや感想を述べてみたい。
1.国家斉唱
河邉社長の肝いりで今年からはじまった。中国人の社員も複数いる中、「国歌斉唱が要りますか?」という社員の懸念を説き伏せた。社長の信念が社員を動かした。
2.18年連続増収増益
広尾の本店は 18年連続増収増益を達成した。この景気乱高下があった時代でこの成果は特筆ものである。また銀座店もオープン以来ずっと右肩上がりの成績をあげており、ひとえに経営力の賜物である。「元相撲取り」という話題だけではこの成績はなし得ないはずだ。
3.ボーナス
会社が赤字であったり、粗利益が前年を下回っていたら支払わない。それが経営計画書に明記してある。ボーナスは年に一回(冬)支給で、夏は社員旅行にあてる。ボーナスの金額は社員個々の獲得ポイント × ポイント単価で決まる。獲得ポイントは、経営計画書に記載されているが、たとえば、河邉塾(社長主催の毎月一回の勉強会)に出たら 3ポイント、店舗主催の飲み会に出たら 3ポイント、経営計画書を紛失したらマイナス 5ポイント、といった具合に決まっている。ポイント単価は業績によって社長が決める。今年がんばってポイントを集めた人は 100万円近い賞与を手にする。
4.発表の上達
私は一昨年の会にもださせていただいた。わずか二年の間にこれほど発表が堂に入るものかと驚いた。河邉社長の発表力も大幅に進化したが、社員ひとりひとりの発表力が格段に向上している。前年実績と目標との誤差を発表。その総括をふまえて今期目標と具体的な施策を発表する。とくに書式は定めていないが、各人が工夫を凝らして発表するので互いに刺激となって進化する。
5.「社訓こだわり大賞」というもの
玉海力の経営理念は「関わるすべての人を幸せにする企業でありたい」である。それ以外に調理理念と社訓がある。社訓 は次の七箇条だ。
・今やれる事は必ず今行動する事
・約束事は必ず守る。嘘はつかぬ事
・常に笑顔で、清潔である事
・常に謙虚で、感謝の気持ちを持つ事
・明るくのびのびと仕事をする事
・あきらめずに最後までやり抜く事
・陰口を言わず正々堂々とぶつかる事
この七箇条を毎日の朝礼で唱和するだけでなく、年に一回全社員で投票を行う。社訓の各項目について、誰が最もそれを実行した人かを無記名で投票する。一番多くの票が集まった人を表彰し、金一封を授与するのだ。必ずしも役職者が選ばれるわけではなく、この日も一人で二つの賞を受けていた若手社員がいた。
6.「一分間スピーチ大会」
懇親会はバイキング形式で食事とドリンクをいただきながら、一分間スピーチ大会があった。来賓を含む全員がスピーチする。テーマは「今日の発表会で感じたこと、決意したこと」。ルールがあり、持ち時間は 1分。プラスマイナス 15秒以内で スピーチすれば OKだが、それを超えると 1分に付き 1,000円が課金される。ちなみに店長などの役職者と来賓はプラスマイナス 10秒という厳しさ。「どれだけお話しいただいても構いません。その分課金を頂戴するだけです」と言われ、私は 2分半話して 2,000円支払った。河邉社長 5分ほど話して 5,000円支払っていた。集まったお金は、35,000円あり、それを何 度かに分けてジャンケン大会の勝者に授与する。30人のジャンケンをこなすためには、独自に決めたジャンケンルールに従って行い、中国人女性が一番多くの賞金を獲得して喜んでいた。
★玉海力 http://www.tamakairiki.co.jp/index.php
★河邉社長ブログ http://b-sumou.at.webry.info/201409/article_6.html
さてここまで。
今夜の「がんばれ!ナイト」in 東京 八重洲では、玉海力の河邉社長にゲスト講演していただく。テーマは、玉海力の内部管理。とくに人事管理に Dropbox などのクラウドサービスを利用し、シンプルで分かりやすい管理システムを導入して社員の意欲を引きだしておられる様子をくわしく解説していただく。
本邦初のこの企画、残席 2ぐらいならドタ参 OK です。ただし、受講費+懇親会(玉海力のちゃんこ)セット参加できる方のみです。
経営計画書の実物も見せていただきましょう。参加希望の方は、こちらまでメールをお送りください。take@e-comon.co.jp 「ドタ参希望」
・今夜の「がんばれ!ナイト」詳細
→ http://www.e-comon.co.jp/session/?p=4390