「武沢さん、こうして気が置ける仲間と酒を飲むのは楽しいね」
「え?気が置ける仲間?」
知らず知らずに日本語を間違って使っているケースが多い。
・「気が置ける」と「気が置けない」
・「泥臭い」と「バタ臭い」
・「情けは人のためならず」
相手に対して気配りや遠慮をしなくてよいことを「気が置けない」と言う。だから酒を飲みたい相手は、「気が置けない人」の方がよい。
「泥臭い」とは、あか抜けていない、野暮ったいという意味を表し、「バタ臭い」は、バターの臭いがするというところから西洋的な様子を例えるときに使う。
「情けは人のためならず」は、情けをかけるとその人のためにならない、という意味ではない。人に情けをかけることは自分のためになるという意味だ。
いずれにしても、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」というように、分からぬことはその場で解決しよう。「後で調べよう」などと思わないことだ。
だが、聞くだけではまだ足りない。
もう9センチ程ずらしてみたい。なぜ9センチか?
一昨日号でご紹介したインド皇帝アクバルと学者ビルバルに再びご登場願おう。
アクバル王「ウソと真実はどれ程違うか」
ビルバル「9センチの差がございます」
アクバル王「なに? 9センチ、と申すか」
ビルバル(身を乗り出しながら)「さよう! 9センチでございます」
アクバル王「いかなるゆえに9センチと」
ビルバル「大王様、よ~くご覧になってお考えくだされ。なぜならば、大王様が人からお聞きになる話には、ウソも含まれておりましょう。すべてが真実ではございません。しかしながら、大王様がご自身の目でしかと確かめられたことは、すべて真実でございます。されば、目と耳の間隔がちょうど9センチですからそのように申し上げた次第です」
こうした教訓を素直に実行した皇帝アクバルは、300年続いた悪税を大改正するなど、屈指の名皇帝になってゆく。
日本では「百聞は一見にしかず」というが、インドでは「ウソとホントの差は9センチ」とでも言うのだろうか?