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社員に委譲するということ

プロジェクトXに替わるNHKの新番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』が始まった。
第一回の昨日は、リゾート再生請負人といわれる星野佳路氏が登場した。行き詰まったリゾート施設や旅館の再生のため、星野が経営に乗り出すとき、「現場をもっともわかっているのは、これまで働いてきた社員達」と社員を財産と考え、自ら辞める人以外は一人も解雇しないという。
そして、客と直接向き合う「現場」に出来る限り権限を委譲し、「任せる」ことで、肩を落としていた社員のモチベーションをかきたてる。星野の口ぐせは「それでどうするの?」。
意思決定は社長の仕事ではなく社員の仕事だという哲学なのだ。また、独自のフラット組織は、プロジェクト単位で動く。そのリーダーすら立候補と投票制という民主主義の徹底ぶり。

だがこうした星野の経営術は、氏が経営者駆け出しの30代で味わったドン底体験から生まれたもの。
軽井沢の老舗温泉ホテルの長男として生まれた星野は、アメリカで学んだトップダウンのホテル経営術をそのまま日本に持ち込み、社員の1/3が退職という憂き目にあう。
職安で求人活動しても、「星野に行けば殺される」とウワサされ、誰も入ってこない苦しみを味わった。今日の星野流経営は、こうした塗炭の苦しみを経てつかんだものなのだ。

NHK『プロフェッショナル 第一回』↓
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/060110/index.html 

大胆に任せる
といえばアメリカのジョエル・クルツマンがこんなことを語っている。

・・・私は数年間だけコンサルティング会社を経営していたことがある。その当時、社員のコンサルタントだけでなく社外からもスペシャリストを募ってチームを組み、仕事にあたっていた。そのうち、気づいたのだが、社外のスペシャリストのほうが社員よりもやる気に満ちていたし、プロジェクトへの参加も熱心で積極的だった。
なぜだろう?私は頭をかかえた。
インセンティブの違いかも知れないと思い、まず社員にもボーナスやストックオプションなどの報奨制度を整備し、夕食をごちそうしたり現金支給でサプライズを演出したりした。だが、この方法はすぐに効力が失せるとわかった。
業績評価制度も導入したし、罰則や叱責などの高圧的な手法も取り入れた。声高に命令したり、服従を要求したり、廊下ですれちがう社員を叱りつけたりもした。だが、だれ一人真に受けなかった。
そしてついにある時気づいた。社外のスペシャリストの方がモティベーションが高いのは、自分自身を起業家としてとらえているからだと悟ったのだ。彼らは自分自身を従業員としてでなく、実業家だと考えている。彼らの会社はいずれも小さいけれど、独立の気概をもち、自慢げで、強い自己責任感とプライドがある。仕事は糧を得るための手段ではなく、彼らのライフスタイルなのだ。それに対して社員のほうは、安心感を求めていた。
(中略)
マネジャーである私が口だししない方が、社内チームの仕事がうまく進むという事実は思いもよらぬことだった。けれども、この事実にいったん気づいてからは、わたしはなるべく社員の邪魔をしないように社員のしたいようにやらせることができるようになった。
・・・

自らのリーダーシップにずっと自信がもてないまま経営するのが社長の本当の姿かも知れないが、ある意味それでも良いと思う。だからこそ進歩も学習もあるのだ。問題はどこまでが社員に任せるべきかという線引きの方法だろう。
究極的には、すべて社員任せ。経営者の仕事は、アジェンダ(議題)の設定だけで済むようにしたいもの。

「うちは社員はそれほどまでに育っていない」と言う声が聞こえてきそうだが、そうではない。「頼れるのは今の社員だけ」なのだと悟ったとき、今までと別次元のリーダーシップがとれるはずなのだ。