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顧客満足は誰のため あるトランペッターの体験

Rewrite:2014年3月28日(金)

あるトランペット演奏家の話。
「いつもの曲をいつもの指揮者のもとで演奏したあと、今後はゲスト指揮者として世界的に有名な方の指揮で別の曲を演じました、すると、まるで魔法にかかったように音楽にまとまりが出る体感をしました。聴衆からお金をもらい、聴衆のために音楽を奏でているのに、指揮者ひとりの存在で仕事の出来映えがガラリと変わる、実に不思議な経験でした」

新人研修のテキストには、「私たちは、誰から給料をもらっているか」という質問がある。模範解答は「お客様」である。会社でもなく、社長でもなく、上司でもない。お客様がお金を払ってくれるからこそ、給料が出るというのが正解なのだ。
しかし、指揮者(リーダー)一人の存在で仕事の出来映えに大きな差が出るという現実はいかんともしがたい。ということは、顧客満足度が高い会社は上司が魅力的な会社であり、その逆も真なりなのではないだろうか?

ある方が次のような体験を語っておられた。
外国の某ホテルが日本進出を果たして間もないころ、そのホテルを訪問した。接客からさりげない対応のひとつひとつが実にきめ細かい。その「特上」のサービスに感動して帰ってこられた。

「またこのホテルに泊まりたい」
その思いが叶い、後日ふたたび同じホテルへ宿泊した。すると今度は「特上」ではなく、「上」程度のサービスに低下していたそうだ。がっかりした。その間、マネージャーが変わったそうだ。

ホテルが外国進出を果たすときには、普通その企業のトップクラスのマネジャーを送り込む。きっとその時に、訪れたゲストの大半は特上のサービスを堪能することだろう。しかしそのマネージャーが帰るとサービスレベルが低下した。顧客の要求水準は何も変わっていない。ホテルで働くスタッフも変わっていない。マニュアルも同じはずだ。マネージャーの存在を除いては何一つ変わっていない。しかし明らかに接客レベルは低下し、同時に顧客満足度は低下した。

例えば、ドアマンの仕事ぶり。
前回と同じドアマンが対応してくれたが、荷物を手渡さないと持とうとしてくれない、ゲストに背を向けて先を歩く、など前回とはまったく別のドアマンのようだったという。

私はこの話を聞いたとき、従業員にとって、もっとも忠誠を尽くす相手は上司であって上司の期待水準どおりの仕事しかしないという一面もあることに気づかされたのである。