私は講演会をお受けするときには、なるべく質疑応答時間をたくさんとるようにお願いしている。出来れば、事前に質問を頂戴したい。
それはなぜか。
先週は2カ所で講演を行った。いずれも事前質問を集めず、幹事の依頼によって演題とレジメを決め、会場に向かった。
百名ほどの若手経営者が集まり、「これからの中小企業経営に必要な経営課題は何か?」というような演題でお話しした。
まず、「中小企業白書」のデータから今の時代をどうとらえるかをお話しした。そうしたデータの中から、中小企業は大企業に比べて損益分岐点が高く、とりわけ非製造業でその傾向が顕著であること。
固定費削減の努力が不十分であることと同時に、中小企業の場合は、景気や政治に関係なく”顧客創造”活動を自前の経営努力によって行っていく必要性を強調した。
そして、具体的な「顧客創造計画書の作り方」についても解説した。
だがおかしい。
万感の思いを胸に語ったが、どうも反応がにぶいのだ。
にぶいというよりは、みんなすでにそんなこと知っているという感じなのだ。
青年会議所や中小企業家同友会、商工会青年部などに集まる若手経営者の多くはすでに充分論客だ。私がお話ししたようなことはすでに知っているばかりでなく、社員や取引先に日頃話しているのだ。
では、彼らはそうしたこと(顧客創造活動)が日頃実践されているか、あるいはその成果に満足しているかとなると「否」である。
知っていることが出来ていないのだ。
それはなぜか?やれない事情、うまくいかない事情が個々にあるのだ。
ある若手はこう言う。
「武沢さん、うちの場合はオヤジ(社長)が数字を全部把握していて自分は数字にノータッチ。だから数字の話をされても全然理解できない。どうしたらオヤジから数字をみせてもらえるだろうか?」
別の経営者はこう尋ねる。
「武沢さん、日常業務をこなすのが精一杯で、講演会などで勉強したことを実行に移す時間がない。このままで社長業と言えるかわからないが、とにかくフル稼働していないと喰えないのですよ」
つまり講演会でお話ししたことは、一般解であり、いかなる業種のいかなる規模の経営者にも必要なことだ。
だが、彼らが抱えている今の問題は、一般解では役に立たない。
ある条件下ではそれが正解なのだが、特殊な条件下では別の解が正解になる場合がある。最初の方の解を「一般解」、あとの方の解を「特殊解」という。
中小企業成功の条件も、私がお話しした講演内容は「一般解」、個々の方が今必要としている答えは「特殊解」のほうだ。
だから、私は講演会でも特殊解に踏みこみたいと思うのだ。
さて、あなたの成功が加速するために、今特殊解を必要としているテーマは何だろうか?