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守ろうとする本能を刺激する

人が動くのは、得られる利益があるときか避けられる損失があるときだ、と聞いたことがある。それに異論はないが、もっと掘り下げて考えてみよう。

何かを”得たい”、”欲しい”という欲望よりは、何かを”守りたい”という本能の方が強いように思う。
例えば、苦境に陥ったときの経営者は、会社と社員と家族を守るために知恵と汗を総動員して必死にがんばる。

ところが、同じ経営者なのに、一億の利益を二億にするときには、同じようながんばりができないことがある。
このことは、何かを”得たい”欲望よりも、今ある状態を”守りたい”欲望の方が強い証ではないかと思うのだ。
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であれば、それを逆手にとって自分や部下のモティベーションを刺激すればよい。
極端な例だが、こうなる。

半年以内に売上高を三倍にしたいと考えていた社長がいたとする。それができれば、社員には二倍の給料も出せる。
この場合、常識的な社長ならば、社員に向かってこう発表するだろう。

「皆さん、半年以内に売上げ三倍を実現しましょう。達成の暁には、皆さんの給料を二倍にします」

ウォーと燃えるに違いない。だが、未達成で終わる可能性が高い。なぜなら、目標未達成でも何も変化がないからだ。何かを守りたいという本能を刺激していないのだ。

そこでこの社長はもっと刺激的な発表をすることにした。

「皆さん、全員の給料を今月から二倍に引き上げます。その変わり、売上げを半年以内に三倍にできなかったら、もとの給料に戻します」

いかがだろう。こっちのほうが効果はでかそうだ。

事実、それに近いことをやった経営者がいる。今から80年ほど前のヘンリーフォードだ。当時の給与水準の二倍の給料で社員を雇い、そのかわり猛烈に働かせ、なおかつ禁酒法を必ず守るよう、「帰宅後のアルコール絶対禁止」、規則正しく早寝早起きすること、など社員の私生活に至るまで厳しく管理したという。
今の給料を確保しつづけるために、社員の多くが真剣にフォードの要求にあわせていったという。

フォードのやり方が今もそのまま通用するとは思えないが、一つの真理がそこにあるのではないだろうか。
それは、「いったん手に入れたものでそれが好ましいものであれば、絶対守ろうというモティベーションは強い」ということ。

この応用方法をあなたも考えてみよう。