中国の故事に、「男子三日会わざれば刮目(かつもく)して相待つべし」というのがある。三日も会っていないと、男子たるもの「お前があのときの武沢か?」と、相手が目をこすって確認するくらいに変化成長しているべきだ、という意味だ。
一ヶ月ぶりに会っても半年ぶりに会っても同じような話題しか口にできないようではビジネスリーダーたる資格がない。
「人間、生涯が学習や。まだまだ若いモンにはまかせておけへん。
来年でワシも60才になるが、今からもう一度大学生として学校へ通うんや」と意気軒昂な山田会長(仮名)は、大阪で建材卸業を営む。
氏の会社には30名ほどのスタッフがいるが、今後二年間は学生として毎週土曜日に学校通いを始める決心をした。
昨年、社長職をご子息に譲り、今は会長の山田さんは、ヒマができたから学校通いを決意したのではない。建設関連の基礎知識をおさらいしつつ、最新知識も吸収して3年以内に新会社を設立するためらしい。
この心がけが素晴らしいではないか。いつお会いしてもフレッシュな山田さんの魅力は、いつもこうした新しい何かのプロジェクトを抱えていることだ。
ところで、脳以外の箇所は加齢とともに衰え、やがて死にいたるが、脳に限っていえば鍛えれば鍛えるほど成長することがわかっている。
しかも脳は、同じことが繰り返されると徐々に停滞しはじめる反面、新しい状況を与えてあげることで俄然、活性化しだす。
脳の鍛え方はいたってカンタン。単純な“読み書き計算”で充分だ、というのがムック本『図解 頭がよくなる朝10分の習慣』(川島慶太著、PHP研究所)の中から読み取れる。
同書より、“なるほど”とうなった箇所を厳選してお届けしたい。
この本を読んでまずビックリしたことがある。それは、ワクワク楽しみながら脳を使っているほうが良いと思っていたが、そうではないらしい。
ワクワクやっていようと、淡々とやっていようと関係ない。単純な計算を10分程度やりさえすれば脳は著しく活性化し始めることがわかった。
この実験では、テレビゲームを楽しんでいるときの脳の活性度と、単純なクレペリン検査の時の脳とを比較した結果、単純計算に分があったことを報告している。
同じように、10分間の読書(特に音読)やメモを取ることによる脳の活性度が高いことを証明している。特に大脳の活性度が高い午前中こそが、もっとも読み書き計算にふさわしい時間だという。
また、トランプゲームで連勝したり連敗したりしても脳の活性度は変わらない。ところが、連敗していたときに、そこから脱出する一勝をあげたりすると、にわかに脳は活性化し出すという。
もう一度言う。
「脳に刺激を与えよう」
そのためには、読み書き計算だ。具体的には、
・毎朝10分間の音読
どうせなら積極的でやる気が生まれるような本を読もう。それと、自社や自分の目標も朗々と音読しよう。
但し、ワンパターンにならないよう、時々内容を書き換えよう。
・毎朝、目標や計画・アイデアなどを紙に書こう
このようにして活性し始めた脳をさらに活用して、新しいアイデアを計画し、時間を置かずに実行しよう。せっかくの新しいアイデアが、窒息する前に酸素を送り込むのだ。
アインシュタインの言葉、「私は未来のことなど考えない。それは、すぐにもやってくるから」というあたりに氏の面目躍如ぶりがうかがえる。未来は自らの手で今の現実にしてしまうのだ。
「脳は違う状況を欲している」ということを忘れずにいたい。