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意見の相違か、感情の対立か

怒号と罵声が飛び、辞表をたたきつける社員も表れた社員集会。しかもそれは、東証一部上場企業での話だ。
大手レコード会社「エイベックス」がその騒動の主であり、今回のお家騒動は元・株主でありその後も同社の個性的な経営を注目していた私としてまことに残念なことだ。

経済ニュースや芸能ニュースなどでも盛んに報道されているのでご存知の方も多いと思うが、まずは8/2付けのこのニュースで出来事を確認しておこう。なお、今日のこの原稿は、同社の批判をすることが目的ではなく、私たちの教訓にしたいがためである。
・・・エイベックス「会長退陣」噴出・・兜町嫌気ストップ安 大荒れ集会、その場で辞表出す社員も

大手レコード会社「エイベックス」が激震に見舞われている。歌手の浜崎あゆみ、安室奈美恵らの育ての親で知られる松浦真在人(まさと)専務(39)が先週末、電撃辞任。所属アーティストらの動向も注目されるなか、2日開かれた社員集会は幹部らへの辞任要求、辞表提出などが相次ぐ大荒れとなった。

松浦氏の辞任は、依田巽会長兼社長(64)のもと7月30日に開催された役員会がきっかけ。関係者によると、常務で浜崎らが所属する系列プロダクション「アクシヴ」社長、千葉龍平氏(40)に対し、「アクシヴが抱える一部音楽作家の利益を私的に使っている」などとして解任動議が提出され、可決。これに激怒した松浦氏が辞表を提出、31日に受理された。

社員らの間にも戸惑いが広がる中、毎週月曜の朝礼を変更した緊急の社員集会が2日午前9時半から東京・港区の同社会議室で行われた。

関係者によると、会議室は満席の500人を超え、廊下にまで人があふれる異様な熱気に包まれた。依田会長が約20分にわたって役員辞任について説明したが、社員から「辞任の理由がはっきりと説明されていない」「会長こそ辞任すべきだ」などと怒号も飛び交い、騒然とした雰囲気に。

約30分の予定がおさまりがつかず、さらに30分延長。「松浦さんがやめるなら僕もついていく」などと叫ぶ社員も多く見られたといい、役員らに詰め寄ったり、辞表を叩きつける社員も複数いたという。

同社幹部は「松浦さんあってのエイベックス。会長が辞任するか、和解して松浦さんが戻ってこなければ、エイベックスは崩壊する」と話し、「松浦さんが新レーベルを立ち上げれば、浜崎らアクシヴのアーティストがエイベックスから離れることにもなりかねない」とささやく社員も。

こうした混乱は同社の株価にも反映し、同日の終値は約2年ぶりに前週末比300円ストップ安の1608円となった。

http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_08/g2004080208.html

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同社の公式サイトでは、

2004年8月1日付けで、「当社人事に関する重要なお知らせ(速報)」と題して、松浦専務と千葉常務の辞任を知らせている。翌8月2日には、去就が注目された看板歌手・浜崎あゆみなどが松浦専務と行動をともにすることを表明。
一夜あけた8月3日の午前、同社は一転して「辞任取締役の復帰に関するお知らせ」を次のように発表した。

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平成16年8月1日付で辞任した松浦勝人氏及び千葉龍平氏が当社グループに復帰することが内定しましたので、お知らせいたします。

なお、千葉氏の利益相反取引は解消の目処が立ちました。

これにより、現在報道されているアーティスト移籍の懸念等は解消されます。
両氏復帰の詳細については決定し次第お知らせいたします。

以上
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この拙速なリリース文からうかがう限り、株式市場での投げ売りや、所属アーティストの一斉離脱をおそれて同社内が相当混乱している様子がうかがえる。
しかし、株式市場は噂や憶測でかえって混乱し、株価も乱高下している。このドタバタ劇の理由は、経営陣の人間(信頼)関係の希薄さによる確執が、ついに表面化したものとされている。
それを表すかのように、エイベックスの公式サイトにも次の一文を見ることができる。

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2.報道に対するコメント
(1)
本日の報道の一部には、以前から代表取締役会長兼社長である依田と松浦氏の間で意見対立があったという記事内容がありましたが、経営方針を巡って見解の相違は従前よりありました。依田会長が当社の経営に関与して以来16年間、ビジネス経験、見識、世代の異なる依田、松浦両氏の間で、依田会長の当社グループ全体を統括する経営者としての理性と、松浦氏のクリエイターとしての感性により、意見が相違することは当然ありました。こうした意見の相違があり、その中でバランスをとって経営してきたことこそが、現在当社がここまで成長発展してきた原動力であったと当社では考えています。16年間お互いに支えあいながら協調して当社グループの発展のために尽力してきたことはまぎれもない事実です。
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エイベックス http://www.avex.co.jp/

さて、この騒動で最大の被害者は株主だろう。次いで、社員やアーティストである。もう少し大人としての組織運営を期待したいものだが、最大の問題は日ごろの信頼関係にあろう。

サイトのコメントにある通り、「意見の相違」なら問題ない。だが、「感情の対立」になっていないだろうか。経営陣の中で、互いの人間性を疑うような関係があってはならない。
経営陣の結束力は、決してないがしろにできない重要課題であることを忘れないでおこう。