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電子出版について聞きたいことがあると訪ねてこられました

「コーヒーをご馳走したい」と、女性経営者が訪ねてこられた。本当の目的は電子出版について聞きたいそうだ。

「武沢さん、電子書籍の売上げは好調ですか?」
「う~ん、そうですね~。好調も不調もないですよ。相場が分からないし、比較するものもないので。ただ、私が勝手に想像していたほど市場は大きくないというのが現状ですかね」

女:実は私も電子書籍を書こうと思っているのですが、売れるのならやるし、売れないのならやめておこうかと。だから様  子を知りたくて。
武:じゃあ、やめた方がいいですよ。電子書籍だけでビジネスになるのはもう少し先でしょうから。
女:でも私の知人のコンサルタントの話では、今は電子書籍の読者が増えているので、電子書籍を書きさえすれば 1,000冊  は固い、とのことですが、それは本当ですか?
武:ウソです。それはどこのコンサルタントですか?人気のマンガとか有名人の写真集とかはそうかもしれませんが、ビジ  ネス書や小説のジャンルではそんなに売れません。100冊も売れずにガッカリしている人もたくさんいますよ。
女:それは値段が高いからでしょ?
武:いえ、仮に 100円の本だったとしても内容次第では 100冊も売れないということが珍しくないですよ。売上が 5,000   円、印税が 3,500円なんて本がゴロゴロあるはずです。
女:じゃあ、そんなに小さい市場なのに武沢さんはどうして毎月本を出されるのですか?
武:異分野進出の種まきのつもりです。電子出版の魅力は、作品をつくって市場にリリースし、反応を得るまでのスピード  が圧倒的に早いこと、一冊単位、リアルタイムで売上が分かること、それに応じた印税が毎月振り込まれること、です  かね。
女:じゃあ、その分野のフロントランナーになれるというわけですね。
武:それぐらいのつもりの方がいい。今すぐ利益を得られるものではないけれど、電子書籍市場で自分のポジショニングを  作って行くには格好なタイミングだと思います。ただ、情報が少ないので試行錯誤することも多いですがね。先日の本  では、ルビがうまく表示されなかったことがあり、それだけで丸一日つぶれました。おかげでルビ問題については相当  詳しくなりましたけど。(笑)
女:大変そうだし、面白そうでもある。どうしようか迷っちゃいます。
武:どんな本を出したいのですか?
女:私の本業のノウハウなのですが、昨年、ある新聞のコラムに連載したときの記事があって、それならすぐに電子書籍化  できるかな、と。
武:あれれ、それはちょっと安易じゃないですかね。一番大切なのは作り手の気持ちです。「どうだ!今回の作品は」とい  うぐらいの気概のものを作り、発売してもらいたい。紙の原稿があるから電子化しておこうか、というイージーな本が  多いような気がします。
女:なるほど、おっしゃることはよく分かります。もう一度、プランを練り直します。
武:コーヒーをご馳走になりながら夢を奪ったかもしれません。でもあとから失望するより、幻想に近い希望は前もって叩  いておいた方がマシでしょ。