Rewrite:2014年3月26日(水)
「The end of RESPONSIBILITY」(責任の行き止まり)
アメリカ合衆国大統領の執務室に掲げてあるプレートだ。企業の社長デスクの上にもそんなプレートがあっても良い。
「おかしいなぁ、なぜこんな結果になるんだ?理由を聞かせてくれ」
靴販売の「シューズマート田仲(仮名)」の田仲社長は、経営会議で眉間にシワを寄せた。その理由は粗利益の急激な低下だ。3か月前に改装したばかりの本店の粗利益が29%から22%にまで低下しているのだ。
田仲では、本店の改装オープンにあわせて台湾製の低価格シューズを目玉商品にした。このシューズ自体の粗利益は40%ある。他の定番品の価格を値下げ販売しても最終的には30%を越す粗利益が出るはずだった。
この会社の役員は、社長、専務(奥さん、経理担当)、仕入部長、店舗運営部長、総務部長の5名だ。
商品の値決めは仕入部長が行うが、値下げする権限は店舗運営部長にもある。また7店舗それぞれの店長にも値引きの裁量が与えられているのだ。田仲社長がもう一度発言した。
「だれの責任なんだ?」
社員数が増え、組織として仕事をこなすようになると責任の所在があいまいになることがある。
本来なら粗利益責任は仕入部長にあるはずだ。店舗での値下げ権限があるとは言え、それらをいつも把握して粗利益をコントロールする責任があるのだ。しかし、仕入部長は仕入れのための出張が多く、社内にいることは滅多にない。外国出張も多く、仕入部長にその責任を追及することは気の毒だと社長もわかっている。
店舗運営部長も7店舗の指導で忙しく、粗利益の低下をリアルタイムで把握することは困難だ。販売促進の企画やチラシ制作など多忙を極めていた。
この場合、二つの視点が必要だ。一つは、社長が発した質問「だれの責任か?」という視点だ。
あと一つは、「なぜそうなるのか?どうすれば改善されるか?」ということだ。多くの会議に参加して気づくことは、「なぜそうなるのか?」という議論は必ずなされるが、「だれの責任か?」という議論が足りないことが多い。
田仲での会議は次のような結論が出た。
1.今まで、実際には粗利益コントロール責任者が不在であったことを反省する。
2.今後は、月曜日に経理から出される販売速報をもとに各役員は問題発見と解決策をレポートにまとめ、火曜日の経営会議に提出する。
3.売上高の責任者は店舗運営部長、粗利益と在庫の責任者は仕入部長、経費の責任者は専務とする。
責任の所在をあいまいにしたままで、組織全体としての問題を議論しても真剣味に欠けるのだ。
もちろんすべての結果責任の行き止まりは社長にあるが、個々の現象に対しては幹部が最終責任を負わねばならない。明日の経営者を育てるためにも、幹部に責任を負わせることを避けていてはならないのだ。