「うちの会社は女子社員と男子社員の仲が悪い。それを武沢先生のお知り合いの方で研修で解決できる方はおみえになりませんかね?」
ある若社長にそう言われ、私は、「それは研修の問題ではないでしょ」とお答えしたが、詳しく聞いてみるとやはり会社の体質といえそうだ。
電気工事業を営むその会社は、営業や業務の社員は男子ばかり 25名。その一方、経理と総務の内勤者は女性ばかり 5名。役員を加えると 33名の会社である。全員が正社員でパートはいない。立場や勤務条件の違いはないので、そこにあるのは
・男子と女子の違い
・外勤と内勤の違い
ということになる。女性はすべて主婦で家に帰って夕食を作ったり、子育てがある。ほぼ例外なく定時の 18時ジャストに帰宅する。一方、男性社員は既婚と独身が半々で、全員毎日遅くまで働いている。20時より早く帰れることは滅多になく、独身者は 22時や 23時まで残る社員も多い。
外勤の男性は、数字目標があり、達成したらご褒美がもらえる。未達成が続くと会議でやり玉にあげられる。内勤の女性は、数字目標がない。従って、ご褒美はもらえないが、やり玉にあげられることもない。
男女が不仲になるのは、最初のボタンからかけ違いがあり、このままではずっと内勤者(女性)と外勤者(男性)がしっくり来ないと思われる。
案の定、その会社はあからさまに「いいよな女性陣は。目標がないんだから」とか「俺もたまには定時で帰りたいよ」などと言う。人数では女性が負けているので言い返しはしないものの、結託して男性に「非協力」という方法で反撃に出る。
「悪いけど、この見積書を至急 FAX してくれるかな」
「この手書き帳票をエクセルで作成してもらえない」
すると露骨に嫌な顔をして、「決算で手が離せません」「直接ではなく、経理部長を通してください」などと仕返しをする。
これはまずい、と思ったその若社長は、社員旅行や懇親会、花見大会、ボーリング大会などを次々と企画した。関係改善をはかろうとしたのだがそれにも女性陣は出ない。
「主婦だから無理」という。
「たまには出てよ」と若社長に頼まれ、経営計画発表会のあとの懇親会に出た。すると、飲んで大声で騒ぐ男性陣の飲みっぷりに目も耳もおおいたくなり、時間の無駄以外の何ものでもないと分かって次の年から出なくなった。
「いつからそうなったのですか」と私が聞くと、少なくとも 10年ぐらい前からそうだったという。それが最近、ますます目立ってきたという。だから解決策をご相談したいと若社長。
この問題の本質は何だろう。こうなった原因は何で、対策は何だろう。その答えをもって今から若社長が訪ねてこられる。