盆栽は、あの小さな鉢植えの中に生命力のすべてを溜め込むからこそ魅力がある。幹や枝葉に気が充満し、何ともいえない不思議な力と光彩を周囲に放つ。好きな人にとっては、その気品みなぎる姿が心を打つという。
だがある日、沖縄のA社長は「今度鉢植えを変えるから、ちょっと2~3日だけ。」と、鉢から出した松の盆栽を裏庭に植えたという。
するとどうだろう。あっという間に子供の身長ほどに大きくなり、二度と鉢には戻せないサイズになってしまったそうだ。この現象をみてAさんは、持ち前の陽転思考でこう考えた。
「時と場所が与えられればあっという間にデカクなれるなんて、なんて素晴らしい。人間さまと同じだ。いや、今のオレといっしょじゃないのか。今でこそ那覇市内で小さな個人商店を経営しているが、盆栽のように自分の気を充満させていれば、必ずあっという間に大きくなれるチャンスがくる。もしそのチャンスが来なかったとしても、自分が気を充満させていれば、それだけで周囲に感動を与える生き方ができるし、自分も納得できる。」
Aさんは“盆栽事件”から考えただけではなく、即刻行動に移した。それがeコマースだ。ホームページの稚拙さをカバーするために、「不明な点はすべて携帯電話に連絡して」とアピール。しかも24時間携帯電話受付OKにした。すごい根性だ。
しかし、このネット通販はうまく軌道に乗ったとは言えない。いや、むしろAさんは失望した。大きな軌道修正が必要だと思い知ったのだ。だが、めげているひまはない。盆栽が毎日手入れを必要とするように、自らの気を充満させるためには、やはり毎日の心の手入れが必要だ。
「がんばれ社長!」を読み始めた。沖縄非凡会にも参加した。時間の許すかぎり読書や勉強会などにも参加しはじめた。業績は苦戦したままだが、間違いなくAさんの回りで何かの空気が変わり始めた。Aさんの気持ちに“精”が宿りはじめたといって良い。
沖縄には『がじゅまる』という木がある。この木には、『キジムナー』という木の妖精が棲でいると言い伝えられている。『がじゅまる』に妖精が棲むならば、私たちの気力のなかに明日の偉業の妖精が棲んでいても何ら不思議はない。
見つけ、活かそう、あなたの妖精を。
今日の原稿ヒント提供者:沖縄非凡会 匿名希望A社長 ありがとう。