未分類

なぜ売れるのか

昨日のマガジンに対して、お二人の経営者から興味深いメールが届いた。まずは、広島県の卸売業T社長からのご質問を紹介しよう。

・・・武沢さんの「がんばれ社長!」、幹部全員で毎日楽しみに拝読しております。さて、11/6号にて“売れない理由”や“出来ない理由”を社員に問いかけてはいけない、というようなくだりがありましたね。実はこの件で社内がちょっとした騒ぎになりました。(笑)と、いいますのは、弊社では伝統的に「売れない理由さがし」を考えるようにしつけをしてきたからです。私たちにとっての顧客である小売業、あるいはその先におられる消費者の方々が、これなら買わないはずはない、と思えるまでに知恵を出せと指導してきました。その一環として「売れない理由」をトコトン掘り下げて考えるように言ってきたのです。「売れない理由さがし」「買わない理由さがし」は、販売戦略を練る上でとても大事なプロセスだと思うのですが、11/6号の武沢さんの主張も理解できます。そのあたり、どのように解釈すべきでしょうか。
・・・

それに対して私から差し上げた回答の要旨は次のとおり。

Tさんの経営方針と私の主張は矛盾していないはずだ。「どのようにしたら売れるか」を真剣に考える過程で、売れない理由を探すことがあってもおかしくない。いや、そう考えることがむしろ自然だろう。売れない理由・買わない理由を掘り下げた結果、売れる理由を見つけるということは素晴らしい思考プロセスだと思う。と、ご回答申し上げた。

私が好感をもっている会社のひとつに「エイベックス」という音楽会社がある。この会社は、「特異性ある創造と貢献」を経営理念に、文字通り「特異」な道を歩んできた。

音楽CDの宣伝をするために、若者のライフスタイルを徹底分析。その結果、業界初の試みとして深夜帯を使ったテレビCMを流してヒットさせるというマーケティング手法を編み出した。これは、今でこそ業界常識の一つとなっているが、最初に成功させたのは同社だ。

また、同社の主力アイテムのひとつ「ダンスミュージック」を広げるために、東京ドーム貸し切りダンスイベントを大成功させた。最近では、業界全体が不正コピー問題で悩むなか、同社は業界に先がけてコピーコントールCDを発売し、消費者も含めた業界全体に対して先鞭をつけた。このように、同社のアイデア実行力のすごさと、そのアイデアヒット率の高さには感服する。良い意味において音楽業界の異端児・革命児と言ってもよいだろう。

こうした企業文化を支えているのは、同社の理念であり、マネジメント力の確かさに違いない。成功するために新しい知恵をふりしぼる伝統が社内にあるはずだ。

エイベックス http://www.avex.co.jp/

もう一通のメール、こちらは山梨県の女性経営者Iさんからのものだ。

・・・
かれこれ10年になりましょうか。主人と二人三脚で始めた会社ですが今では10人ほどの従業員をもつまでになれました。ひとえに「約束を守る、時間と納期を守る、ミスをしない、ミスしても言い訳しない、報告・連絡・相談が命」を信条にしてきたのが地域で浸透し、評価されるようになったものと存じます。こんな当たり前のような信条なのですが、それが出来ずに困っておられる同業者が多いようで、消去法的に当社が成長させていただいているという感じでしょうか。従って、11/6号にあった「売れる理由を考える」としたら、上記の信条を貫くという結論になりそうです。とりたててうりものがない当社にとっては、こんなうりものしかないのですが、これからも「がんばれ社長!」をメール顧問のつもりで拝読してがんばらせていただく所存です。
・・・

Iさん、ありがとう。

すばらしいご意見だが、一点だけ申し上げたい。それは、消去法であなたの企業が選ばれるようなことは決してない、ということだ。積極的選択によってあなたの企業が選ばれているのだ、と自覚しよう。

ある程度選ばれた企業の中から始めて消去法が使われることがあるが、まずは積極的選択があったということを知っておこう。
あなたの信条が、その積極的選択基準に合致したと思うし、他にも技術的な面で評価を受けている点があるやもしれない。従ってあなたの会社にとっては、「なぜ売れているのか」を知っておくことも、大変重要なことだろう。