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ITの視点

“ITバブルがはじけた”という表現をよく見聞きする。そら見ろ、ネットでものが売れるか、といわんばかりに聞こえるが、そうした誤解をしてはいけない。事態を冷静に理解すべきだろう。

はじけたのはIT関連企業の株価である。目先の収益よりも将来性にかけるあまり、一度も黒字になっていない会社でもどんどん株価が上昇し、さらに上昇した。その株価がやっぱりはじけたわけだが、決して社会全体のIT化がストップしたのではない。もちろん経営を取りまく環境もさらにIT対応すべきであることに変わりはない。

日本では、米国や一部のアジア諸国に遅れるかたちでIT化が進行している。その結果何がおきるか?そう、学習効果だ。
豊富な失敗と成功の事例を教訓としながらIT投資を行うことができる。しかもお金では買えないほど貴重でありがたい事例を活かすことができるのだ。まさしく、「歴史に学べ」である。

最近では「なぜ誰もネットで買わなくなるのか」(ダイヤモンド社)が好著でおすすめだ。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/pocketpc/wsea.cgi?W-NIPS=9976260830&RCODE=%43%33%38

なかでもペンキ専門会社「シャーウィン・ウィリアムズ」のサイトが事例としてでてくるが、これが圧巻だ。まずともかく、この英語サイトにアクセスしていただきたい。
シャーウィン・ウィリアムズ http://www.sherwin.com/

一見するだけでは、ごく普通のちょっとオシャレな感じのサイトにすぎない。ところがどうして、コンセプトがすごい。

だれにアクセスしてもらいたいのか、どんなサイトを作ればゲストが喜ぶか、を真剣に考えた。その結果、このサイトでは特別なしかけがいくつかある。
サイト来訪者が一番気にしているのは、浴室を塗装するのにどれだけの量のペンキが必要なのか、ということだ。
そして次には、明日のお天気をピンポイントで知りたい、ということだ。つぎのページの右上にはローカル天気予報のボタンがある。
http://www.sherwin.com/productsservices/default.asp

このように、ネットでもやっぱり「ペンキはシャーウィン」のブランドを確立し、実際の購入はお近くの店舗で買えるようにサイトで手引きしている。
この会社も以前は製品を羅列しただけのサイトだったという。アクセスした人が自分のニーズに合わせてクリックしてくれれば良い、という考え方であり、それが“過去の普通”だった。
ところが“新しい普通”は時々刻々と進化している。そうした事例をリアルタイムで知ることができるのがネットの特長であり、学びやすい環境でもある。

IT化に関する方針を明確にし、「IT化5ヶ年ビジョン」なども作って、そのなかで今年はどこまでやるか、いくら投資するかを決めて進行させよう。いつまでも実験段階でいるときは終わった。