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理解と同意

「武沢くん、男も還暦を気にする年令になるとね、若いときのようなパワーや個人的欲望が薄らいできて、自分の情熱のはけ口をコントロールしなきゃならんのですよ。限られてくるからね、エネルギーが。きっと何年かしたら、あなたもそれを実感するときが来るに違いない。」

「はぁ、そんなものですか。ノートパソコンみたくパワーマネジメントが必要ですかね、ハハ。」

「・・・」

このE会長、その枯れたセリフに似つかわしくない漆黒のテスタロッサを操りながら、私を名古屋駅まで運んでくれた。

「今から東京だね、がんばってきなさいよ、向こうには全国からすごいヤツらが集まってきてるから、気を抜くんじゃないよ。」
「はい、がんばってきます。」
「まるで出征兵を送りだすみたいだね、ワハハ。」

新幹線に乗りこみ、E会長の言葉を反すうしてみた。「男も還暦を気にする・・・、あなたもそれを実感するときが来るに違いない。」

さあ、そこで読者の皆さんにクイズを出題。

『E会長のセリフを聞いた武沢は、このとき何を感じ、今後どのような行動をとるとお思いですか?』

続きを読む前に、あなたはこの出来事から何を感じたかを、30秒考えていただきたい。

正解は明日、と言いたいが明日には明日のメッセージがある。今日のうちにやっておこう。
正解を答えるだけでなく、その理由も述べるのが今日の主旨だ。実はそのことが、企業経営と密接に関係することがわかる。

結論から言おう。「理解」と「同意」は別物、ということだ。

E会長の発言内容を武沢はたしかに「理解」した。人生の先輩としてその世代に達していない私としては、異論も反論もあるはずがない。従って、発言の内容を正確に「理解」した。

だが、「同意」したのではない。同意できないのだ。

年令がまだ還暦に近くない、という理由で同意できない。また、もし近づいたところで、決してパワーを落とすような年のとりかたはしたくない、という意味でも「同意」していない。

E会長の説を「理解」はしたが、「同意」はしていない私は、従って何も行動は起こさない。トレーニングジムへ行って体を鍛えることがあるかも知れないが、それは発言への反発としての行動だ。

さて、
経営者としてのあなたが示す会社の方針や目標はどうだろうか。部下に「理解」されるだけでなく、「同意」されているだろうか。また、あなたは部下の意見や部下の気持ちを「理解」しているのか、それとも「同意」しているのか。

「部下が動いてくれなくて・・・」と悩むリーダーは、「理解」「同意」いずれが得られていないのかをチェックしてみよう。

「理解」を得るためには、一度の説明で済むことがある。
ところが「同意」を得るためには、繰り返しくりかえし、さらにはくり返して反復することや、感情に訴えかけるようなメッセージで共感を得なければならない。

あなたは今日の「がんばれ社長!」の内容に対して、「理解」して下さいましたか、それとも「同意」?