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日本人アスリートと百匹目の猿現象

日本人アスリートと百匹目の猿現象

●昭和のころ、日本人アスリートは国際舞台に弱いといわれた。特に五輪などの大舞台になると本来の実力が発揮できず期待外れの成績で終わる選手が多かった。
「国を背負って立つ」「日の丸を掲げたい」「郷土と母校のためにも戦う」といった責任感が重圧となり、プレッシャーに負けて体調不良になったり、残念にも自死の道を選ぶ選手もいた。

●しかしこの半世紀ほどで様相は一変した。
昨年カタールで開催されたサッカーW杯での日本の活躍はまだ記憶に新しい。優勝経験が
ある世界の強豪国・ドイツとスペインを相次いで撃破するようなことが現実に起きるなんていまだに信じられないくらいだ。そして今年3月には野球の世界大会「WBC」が開催され、
本はここでも世界の強豪を打ち破って3度目の優勝を果たした。

●「大舞台に強い日本」「ジャイアントキリングの日本」という新しい日本ブランドが
確立されつつある。今度は外国が日本相手にジャイアントキリングを企む番だ。
強いのはサッカーや野球だけではない。卓球、バレー、柔道、ラグビー、
バスケットボール、レスリング、テニス、水泳、陸上、バドミントンなど、
いずれも日本選手が国際舞台で大活躍しているのだ。

●なぜ最近になって日本のスポーツがここまで強くなったのだろうか。
私なりに考えてみたのだが、理由はふたつあるように思う。
ひとつは、国際経験。積極的に活躍の場を海外にもとめ、世界の一流がつどう環境に身を
おく選手がふえた。それを通して技術や体力だけでなく、一流のメンタルを学んでいった。

●もうひとつは、「百匹目の猿現象」
アスリートを猿にたとえるわけではないが、この現象は猿だけのものではないはずだ。
昔、ニホンザルはじゃがいもは土のついた状態で食べていたが、ある時、一匹の猿が川で
土を洗い流して食べた。するとその行動が群れに拡がり、その数がおよそ百匹に達したあたりで、遠く離れた地域の猿の群れも同じ行動をはじめたという。こうした、群れの行動や
思考が一定数を超えると、接触の無い遠くにいる群れにも伝播するという現象を
「百匹目の猿現象」という。

●同じことが日本スポーツ界に起きているように思う。
他競技の選手たちの偉業がアスリートのメンタルに影響をあたえないわけがない。
あとは、スポーツ界の偉業が経済界、ビジネス界、あるいは政治の世界に伝搬するタイミングを見計らうだけだ。