ニューヨークとネズミ
●子どものころ住んでいたいた家は木造平屋建てで、天井裏ではいつもネズミが走り回っていた。母親も慣れたもので特別おどろかない。
「今日も派手に運動会してるね」などと呑気なものだった。
●ある日の夜、机にむかって勉強していると天井の羽目板の間からおびただしい水と一緒にネズミが私の頭に落ちてきた。
「ヒェー」と言いながら椅子ごと後ろに倒れたものだ。そのときばかりは母も血相を変えて走ってきた。「雨水がたまったんだわ」と言いながら拭き掃除を始める母だったが、あれはネズミの尿なのではないかと今でも思っている。
●当時はネズミ退治のためにネコを飼う家が多かった。私の家も飼っていた。ネコは私の弟のことをネコだと思っていた節がある。なぜなら、退治したネズミを必ず弟の前に運んできたからだ。幸い、私は一度もネコの獲物を見ずに済んだが、弟は幾度となく悲鳴をあげていた。
●そういった次第で昭和の家庭では悲鳴がつきものだった。今ではネズミをみることは減ったが、今ニューヨークは大変なことになっているらしい。ネズミが大量繁殖しているそうだ。飲食店などは頻繁に駆除業者に依頼せねばならず、コストがバカにならない。なかには引っ越しを余儀なくされるケースもあるという。
●一昨年よりネズミ被害が7割増えているようで、一節によると200万匹はいるらしい。サイズもアメリカンで、猫サイズのものまで出ているとニューヨークっ子は語る。
●事態を重くみたニューヨーク市はネズミ駆除専門の職員を募集した。
待遇は破格で、最大年俸で17万ドル、日本円にして約2300万円だ。
応募資格をみると「専門的な知識と一定期間の経験をしていること」とある。
さらには、「モチベーションが高く血気盛んな人」
「悪者オーラのある人(a general aura of badassery)」といった項目もある。
●役者のオーディションでもあるまいし、「悪者オーラのある人」がどういう意味をもつのかわからないが、警戒心の強いネズミに威圧感を与える為なのだそうだ。でもネズミに警戒されてしまったら駆除に困るのではないかと思うが、私がここで心配してもしようがない。
●日本では風が吹けば桶屋が儲かるという。
砂埃がたつので盲目の人が増え、あん摩が増える。すると三味線がたくさん売れるのでネコの皮が大量に必要になる。ネコが減るとネズミが増えるので、たくさんの桶がかじられ、桶屋が儲かるというわけだ。
●ニューヨークもネズミが増えると桶屋が儲かるかもしれない。対策としては、昭和の日本のようにネコを飼えばいいと思うのだが、アメリカは悪者オーラーのある人を集め出した。悪者オーラの人にとっては降って湧いたアメリカンドリームのチャンス。
ことの成りゆきに注目したい。
(峻)
参考:https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000278409.html
ニュース動画:https://www.youtube.com/watch?v=2GQg8DBFQkA