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お帰り寅さん

昨年は20本の映画を劇場で観たが年末ラストは「男はつらいよ お帰り寅さん」にした。いったい寅さんがどのように”復活”するのか楽しみだったが、ものの見事に寅さんが今によみがえった。

今回の作品用に新しく収録した映像と、旧作の名場面を組み合わせた50作めの今作は22年ぶりの新作だという。過去のシリーズ作品49本をすべて4Kデジタル修復し、つなぎあわせたそうだ。

映画の後半、過去の名場面がフラッシュバックされるシーンがある。
その場面で私の斜め前に座っていた年配男性(ひとりで来ていた)が白いハンカチを取り出し、サッと涙をぬぐった。

「今は亡き奥さんと独身時代に寅さん映画を観たのを思い出したのでは…」

そんな勝手な妄想をしたのがいけなかった。一気に涙が湧き、こぼれ落ちた。しまったと思うが隣にいる家内に観られるわけにはいかない。
エンドロールのうちに涙を乾かそうとしたが意外に短く終わってしまった。「トイレ」と言い置いて席をたち、トイレで涙を乾かしたが目の赤いのはとれなかった。

今回の寅さんをみていて気づいたことがある。
まず「寅さんは圧倒的にモテる」ということ。今さらながらよくモテる。毎回、個性的なマドンナに恋し、片思いだけでなく両思いに発展しかける。
男性からも女性からも年上からも年下からも好かれる寅さん。映画だからどのようにでも設定が作れるわけだが、相手思いのやさしい気
ちを無骨な男気で包みこんだ人間には誰だって参ってしまうだろう

もうひとつ気づいたことは「寅さんはふけない」ということ。
寅さんを演じた渥美清は41歳から寅さんを演じた。もともとフケ顔だから得をしているかもしれない。最後の48作目のときには67歳で体調も良くなかったそうだが、どの作品をみても寅さんの年齢はいつも一緒にみえる。それがシリーズものの役者にはとても大切なことだ。実際に渥美清は26歳も年をとったわけだが、それを感じさせない。むしろ周囲だけが年をとっていくような不思議さがある。

「男はつらいよ」の全作品がヒットし、松竹のドル箱シリーズとなった。30作を超えた時点でギネスブックが認定したそうだ。世界最長の映画シリーズ(作品数)として。
ちなみに世界最長の映画シリーズ(年数)は『007』で今春も新作が公開される。ただ007の場合は主人公が何人も変わっているが寅さんはひとりだ。

渥美清が世を去ったのが1996年。当時まだなかったインターネットやスマホをみたとき寅さんはなにを思い、何を語るだろうか。
映画好きの友人に「お正月休みに是非寅さんを」とメールしたところ、その日のうちに観てきたようだ。やはり泣いたそうだ。
自分の人生と重ねて観る人にとっては、泣かないでいるのが難しい

★男はつらいよ お帰り寅さん
 https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/